コバルトの降る街で / 明日の叙景 | 安眠妨害水族館

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コバルトの降る街で/明日の叙景

 

1. コバルトの降る街で

 

ポストブラックメタルバンド、明日の叙景によるデジタルシングル。

 

2014年に結成し、2022年の2ndアルバム「アイランド」が反響を呼んだ彼ら。

8cmシングルライクなジャケットデザインからも、90年代J-POP、あるいはヴィジュアル系バンドからの影響が伺えるのですが、事実、本作制作時に影響を与えたプレイリストが公開されており、LUNA SEAの「ROSIER」や「G」、Laputaの「EVE」、メリーの「溺愛の水槽」などが並んでいました。

LUNA SEAの文脈を、ポストブラックメタルの解釈で切り取った1曲と言えるでしょう。

 

まず、イントロを聴くだけで、ヴィジュアル系との親和性が感じ取れます。

シンコペーションを効かせたリズム感と、ディストーションをかけたサウンドによるアルペジオ。

ギミック重視のキメや、エモーショナルなギターソロ、歌うベースまで、立体感を持って再現しているなといったところ。

オリジナリティとしては、そこにブラストビートを噛ませて現代的なデスメタルに昇華しようとしており、加えて、グロウルを主体としたシャウトと、ポエトリーリーディングがVo.布大樹さんの基本スタイルが、差異化を決定づけていました。

クリーントーンのメロディがほぼ見られない、90年代ヴィジュアル系への挑戦状。

これが綺麗にハマっていて、ヴィジュアル系シーンにおける本格派デスメタルバンドがピンと来ないリスナー層でも、明日の叙景なら受け入れられる、という可能性もあり得そうですね。

 

また、本作においてはあえてポエトリーリーディングへの依存を減らしているのもポイント。

コテコテバンドといったら、物々しい語り。

その固定観念への抵抗として、あくまで異質なグロウルを主体でぶつけてきている精神性は、かえって好感が持てるのでは。

こういう機微に、付け焼刃でないことが見え隠れして、余計にそれっぽさを感じてしまうのです。

 

メロディのないバンドは食傷気味、という層にもアピールできるポテンシャルは十分。

音楽においては、百見は一聞に如かず。

まずは聴いてみてほしい1曲でした。