Berias / Clef Doll | 安眠妨害水族館

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Berias/Clef Doll

 

1. Betrayal~奇観測者の瞳~

2. Countess~深紅の抱擁~

3. Revolution Flagge~極彩の星空~

4. Kontrakt~不朽の花~

5. Empireo~戦禍の手紙~

 

物語創作音楽集団 Clef Dollが2013年にリリースした3rdアルバム。

 

同人音楽というカテゴリーになるのですが、その枠から飛び出すべくライブ活動も積極的に行っていたClef Doll。

右目に「過去」、左目に「未来」が視える少女・Jaune Agrumesを主人公にした物語を軸に、アルバム三部作を発表するも、2015年に解散。

2018年に復活していますが、現在は事実上、動きが止まっているのでしょうか。

主要メンバーのVo.Shionさんは、panta rheiを結成し「NO VISUAL,NO LIFE」シリーズに参加するなど、ヴィジュアル系と親和性の高い活動を継続しています。

 

三部作の第三弾としてリリースされた本作のテーマは"悪"。

サブタイトルなどに2ndアルバム「Virtue」とのリンクが見られ、時系列は必ずしも一方通行ではないようですが、物語の継続性を示していました。

物語創作音楽集団を冠しているだけあって、歌詞の裏にある登場人物のバックボーンもしっかり構築されているだけに、作詞も作曲も色々なメンバーが担当していたのが意外というか。

コンセプトメーカーと、作詞者を分けて、濃密な世界観を維持できていたのが凄いですね。

 

男女ツインヴォーカル体制となるものの、本作においては、楽曲によって明確に担当するヴォーカリストが区別されているのも特徴でしょう。

ツインヴォーカルの旨味をあえて排除し、物語の配役として扱うようなアプローチ。

それにより、これまでの作品にあった解説調の語りが不要になり、音楽としての幅が出た印象です。

編成ありきではなく、ストーリーやコンセプトに応じてメンバーの入れ替えもできるのが、同人だからこその強みなのかもしれません。

 

シンフォニックメタルを下地にした「Betrayal~奇観測者の瞳~」や、疾走感のある王道展開から壮大なクワイア風のクロージングで圧倒する「Empireo~戦禍の手紙~」あたりがキラーチューン。

ただし、効いていたのは、彼らにしては異色とも言えるフレンチポップ「Countess~深紅の抱擁~」でした。

シリアスな「Kontrakt~不朽の花~」と同じ人が歌っているとは思えないライトな雰囲気と、ギャップの激しい残虐性のある歌詞。

悪意を自覚していない悪、という異常性や狂気性を上手く表現していて、ポップチューンで邪悪さを引き立てるとは上手いなと。

 

プロダクションとしてはもう一歩というところがないわけではないですが、彼らが同人ユニットにありがちな音源至上主義ではなかったことを踏まえれば、楽曲の成長の余地を持たせていたと捉えておこう。

panta rheiとはまた異なる美意識を感じさせる1枚。