月下一夜/黒曜日
1. 月下一夜
"和"と"V系"の調和を果たした黒曜日の5thデジタルシングル。
率直に言って、"和"と"V系"の調和だけを狙っていくのであれば、目新しさは皆無と言わざるを得ないところ。
ここ10年レベルでのトレンドとなっていて、どのバンドにも1曲は和を意識した楽曲があるものです。
ただし、黒曜日の場合は、そこに"応援ソング"を乗せてきた。
そもそも、負の感情を吐き出す傾向が強いヴィジュアル系というシーン。
和楽器を取り入れる場合は、日本文化特有のワビサビをテーマにしてきた印象で、背中を押すタイプの楽曲とは切り分けてきたと思うのですよ。
そこを融合させてしまうことで差異化をしようというのが、黒曜日における挑戦だったと言えるでしょう。
音楽性としては、彼らが本来持っているゴシック要素やヘヴィネスを抑制し、和楽器の繊細さを押し出したイメージ。
重低音よりも、浮遊感を生み出すサウンドワークになっています。
Vo.黒葉さんの歌唱だけを切り取っても、シンプルに女声を活かした高音域でのメロディが中心。
その結果、歌メロにはキャッチーさ、演奏には鋭さが増していて、アニソンとの親和性が更に高まったのでは。
こういう武器があっても良いな、と素直に思える佳曲に仕上がっていました。
気になる歌詞についても、とても上手く溶け込ませているな、と。
もっと違和感やギャップをフックにしていくのかと思いきや、王道のアプローチ然として"和"と"V系"を繋いでいます。
自然すぎて聴き流してしまうなら、それはそれでもったいないのですが、潜在的には、やはり引っかかる。
なんだかんだで意識に残るフレーズが多く、絶妙なバランスなのですよね。
路線変更というわけでもないのでしょうが、インパクトはあり。
セオリーを飛び越えたところに未来が見える1曲。
<過去の黒曜日に関するレビュー>