花言葉がうまれる会/色々な十字架
1. 花言葉がうまれる会
耽美たるヴィジュアル系バンド、色々な十字架によるデジタルシングル。
第五章と銘打って発表されたのは、雰囲気モノとも言える「花言葉がうまれる会」。
珍奇なボランティア団体というテーマ性を活かすために、あえて"うまれる"を平仮名にしたこだわりに痺れます。
相変わらず、†声で旋律を奏でし者†(ボーカルのこと)、tinkさんのワードセンスが冴え渡ってると言いますか、この人、どれだけ"されたら微妙に嫌なこと"のストックを持っているのだろう、と思わせるシュールな歌詞。
ありもしない花言葉を羅列するアプローチはバンドのスタイルにハマらないわけがなく、それでいてワンパターンにならないようにストーリーも設けているあたり、上手いなと唸らせます。
そして、こちらも相変わらずで曲が良い。
本作では、これまでのベタな王道路線からは少し趣向を変えて、白系的なミディアムナンバーに挑戦しています。
耽美に、繊細に、幻想的に仕立てたギターのフレーズに、感情を抑えているかのように淡々と紡がれていくメロディライン。
シンプルなバンドサウンドによって、無限の想像力を駆り立てるファンタジックなアレンジは、まさしく彼らの志向する90年代的な手法ではありますが、付け焼刃では再現できない精神性にも依存する領域。
こうも解像度高くオリジナルとして昇華されてしまうと、歌詞をどうこう考える余裕もなく、本能で格好良いと思ってしまうのですよ。
ズルいというか、悔しいというか、彼らが受け入れられているのは、この部分の本気度なのだろうなと。
ここにきて音楽的な幅が広がり、シーンの中で無視できない存在になっている色々な十字架。
彼らの音楽が刺さりそうな世代は、まだCD派が根強く残っていることもあり、フルメンバーが揃って、ライブが開催されて、という流れの中、そろそろ単独CD作品のリリースの話題なんかも出てくると良いのだけれど。
<過去の色々な十字架に関するレビュー>