ジレンマ/Ashmaze.
1. 心臓
2. 拒絶と受容
3. 拝啓、嫌いなお前へ
4. 平熱
5. 他人事
Ashmaze.による3rdミニアルバム。
CD盤には、「拒絶と受容」のMVとメイキングが収録されたDVDが付属しています。
コンセプチュアルに攻めた前作「GENOM」に対して、ライブで演奏されることを想像しやすい作品に仕上がった印象。
時勢の変化、バンドのマインドセットなどが反映しているといったところで、この辺りのニュアンスは、リアルタイムで聴くからこそ受け取ることができる感覚ですよね。
ひと昔前は、1日でもはやくで聴きたい気持ちと、中古で出回るのを待って安く手に入れたい気持ちとのジレンマに揺れていたリスナーも多くいるでしょうが、本作においてはダウンロード/ストリーミングもリリースとほぼ同時に解禁。
だったら迷うことなく聴くしかない、というのが本作です。
テーマは、ずばり「ジレンマ」。
ライブへの意識が高まったとはいえ、コンセプト面からもしっかりと練られていて、表題曲を置かずに作品全体で葛藤を表現していました。
まずは、エモーショナルなヴォーカリゼーションと、シリアスなサウンドで世界観への没入を図る「心臓」。
ハードな面と、メロディアスな面でのメリハリをつけて、相反する想いを表しているようにも映ります。
リードトラックとなる「拒絶と受容」は、勢いはそのままに、攻撃性とキャッチー性を純粋に高めていくアプローチ。
メタルコア的なサウンドを用いながらも、聴きやすさを担保することで、歌詞が頭に入りやすくなっているのですが、これが狙いだとしたら、なんとも戦略的ですよ。
表面的にも、内面的にも激しさに振り切ったのが「拝啓、嫌いなお前へ」。
サビでのコーラスワーク、オーディンスも含めて盛り上がるライブフロアを見れる日が、はやく来ますように。
ガツンと激しさをぶつけたところで、ガラっと雰囲気を変えてくるのが「平熱」。
アダルトなサウンドにリアリティを詰め込み、両極端な方向から心を掴むと、ラストのロッカバラード「他人事」を叩き込みます。
テーマとして散々擦られてきた感のある歌詞とはいえども、やはりセンセーショナルな事件の後に聴くと考えさせられる。
時系列的に意図されたものではないとわかっていても、深みが自己補完されたのでは。
音楽的な作り込みとしては「GENOM」に軍配が上がるのかもしれないが、バランス感覚が絶妙。
今聴きたい、今聴かなきゃいけない作品としての主張が強く、インパクトは抜群でした。
ともすれば精神的なヘヴィーさにより、聴く前に構えてしまう部分がないわけでもないものの、コンパクトなミニアルバムに仕立てたのもハードルを下げる意味で効いていたな、と。
なお、ジャケットのセンスもたまらない。
CDをビニール包装したときの気泡を(少し大げさではあるけれど)表現したデザイン。
未開封の現物をメルカリ等で出品したときのサムネイルのようで、デジタルでダウンロードしてもこれがアートワークとして表示されるのは、なんだか皮肉めいているのです。
これも、CDへの愛着と、デジタル化の狭間でのジレンマだったりして。
<過去のAshmaze.に関するレビュー>