フィロデンドロン・セローム/Serendipity
1. フィロデンドロン・セローム
2. 鏡の前で
3. ミノタウロスと解剖台
退廃的・オトナ・エレガンテ・テクノポップユニット、Serendipityの2ndEP。
文学的非自覚性ヴィジュアル系シンガーソングライター、中村椋さんが主催するSerendipity。
鈴木デコさんを迎えた男女ツインヴォーカル編成となっていて、ソロ作品やバンド作品とは異なる大人びたテクノサウンドを展開しています。
端的に言えば、官能的かつ退廃的。
フレンチポップの孕むエロティシズムと、無機質な電子音による冷たい響きを融合させ、独自の世界観を生んでいました。
油絵風に加工したアートワークが象徴するように、収録された3曲は、1932年のピカソがモチーフとのこと。
若きモデル、マリー・テレーズ・ヴァルテルとの愛人関係の絶頂期だった時期と言われており、表層に現れているアート性と、内面に潜ませている情熱が、見事にテーマとシンクロしているのですよね。
囁くようなヴォーカリゼーションの中に、徐々に激しくなっていく感情が滲む「フィロデンドロン・セローム」をはじめ、穏やかなまどろみにメランコリックなメロディが影を落とす「鏡の前で」、情報量の多いポエトリーリーディングによってディープな心象風景を描く「ミノタウロスと解剖台」と、アプローチは違えど、コンセプチュアルに仕上げたことでドラマ性を創出。
歌メロが入っていない部分についても、"無言"という歌詞を歌っているような気にすらなるほどで、3曲とも5分超というボリューム感のある楽曲群ではありますが、そのような構成にした意味合いにも納得できるのでは。
ニュアンスを的確に汲んだデコさんのウィスパーヴォイスと、男女デュエットの強みを際立たせる椋さんのミドルヴォイス。
ぼそぼそと喋るようなフランス語の響きが、密室系的な歌唱で再現できるのか、という意外な気付きもあって、なかなか面白い。
カラーコピーのジャケットに、白地のCDRと簡素な仕様にはなるものの、この内容で700円という価格設定も魅力的でしょうか。
椋さんのオフィシャルショップにて、通販にも対応中。
背景を調べ、歌詞カードを読みながら耳にすることで、より味わいが増す1枚です。