最高の瞬間 / 運命交差点 | 安眠妨害水族館

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最高の瞬間/運命交差点

 

1. 東京

2. 最高の瞬間

3. 名前も知らないウィスキー

4. 15歳の僕を

 

2018年にリリースされた、運命交差点の1stシングル。

 

摩天楼オペラのVo.苑によるサイドプロジェクト。

初音源となった本作は、ライブ会場で先行販売され、後にオフィシャル通販やストリーミング/ダウンロードでの取扱も開始。
CD盤は、二つ折りの紙ジャケット仕様となっています。
サポートメンバーに、Gt.REX、Key.SHOKO、Ba.Toshi、Dr.YUKIというメンバーを揃えており、ソロプロジェクトとしての位置づけではありますが、バンドサウンドによる化学反応も求めているのが特徴と言えるでしょうか。
 
音楽性としては、ジャズを取り入れてお洒落に仕立てた大人のロック。
アコースティックな演奏にハミングを重ねた「東京」を導入に据えると、表題曲となる「最高の瞬間」で掴みのインパクトを生み出します。
シャッフルリズムに、ジャジーな音使い。
ゼロ年代の"お洒落系"時代に消費し尽されたスタイルかと思っていましたが、パフォーマンスを前提としたギミックを削ぎ、生演奏によるダイナミズムを軸に盛り上げる構成は、むしろ新鮮に響くのですよ。
鍵盤を中心にアレンジが施されているので、火がついてきた感のあるピアノロックに先行して取り組んでいたという見方も出来そうですね。
 
大人びた雰囲気はそのままに、しっとり歌い上げるのは「名前も知らないウィスキー」。
ハイトーンに伸びるだけでなく、強弱も含めた苑さんの表現力も圧巻。
キャリアが長くなって、熟成されて深みを増した芳醇な歌声は、渋さの中に、艶やかさを帯びています。
そして、ここまで大人びた楽曲に特化してきた彼らが少年性を歌う「15歳の僕を」が、とにかくキラーチューンなのですよ。
キーボードの旋律とともに、軽やかに疾走していく感傷的なナンバー。
擦り切れた大人の視点と、少年のままの純粋な視点の交錯を、衝動性の高いサウンドで絶妙に再現していました。
 
摩天楼オペラの耽美メタルとは音楽性のベクトルは異なるものの、バンドサウンドで生まれる熱量は変わらないものだな、と。
ヴィジュアルシーンにピアノロックが浸透してきた今だからこそ、改めて聴いておきたい1枚です。