鬨の声/Lamiel
1. in sult-Viper
2. 修羅の庭
3. Divorce
4. Eins
1999年に発表された、Lamielの2ndミニアルバム。
5,000枚限定でのリリースでした。
aieさんと晶さんのツインコンポーザー制だった彼ら。
本作は、その中でもaieさんが4曲中3曲の作曲を担当しており、もっともaieさんの色が出た作品です。
逆に、3rdミニアルバム「心葬」では、aieさんは1曲しか手掛けていないなど、トータル的には晶さんの楽曲のほうが多く音源化されているだけに、史料価値としても貴重な作品と言えるのかもしれません。
一方で、だからといって音楽性がコロコロ変わる、というわけでもないのが面白いところ。
ダークで、ハードで、オリエンタルなサウンドと艶めかしいヴォーカル。
"Lamielと言えば!"というサウンドが共有されており、これが異質な作品かと問われれば、そんなことはないのですよ。
「in sult-Viper」は、清濁を織り交ぜた展開が、美しさと妖しさを表現。
メロディラインとしては、サビの部分ですらぬるっと入る感覚があって、やや平坦なのだけれど、バックの演奏がはっきりとメリハリをつけるため、独特の聴き心地を生み出しています。
キメを多用するギターのコンビネーションや、台詞調の歌メロを差し込むなどのギミックも、名古屋系らしいマニアックな雰囲気を助長していて、期待に応える1曲目に仕上がったかと。
「修羅の庭」も、オリエンタルテイストを継続。
ほどよく疾走するスピード感なのだけれど、やはり平坦に仕立てたメロディはお経を彷彿とさせる。
これは決して否定的な比喩ではなく、ロックサウンドで、この宗教的な世界観を構築してしまったのか、という賞賛として。
Vo.維那さんの無機質さの中に色気を落とし込んだ歌声との相性も抜群で、ウネウネとしたギターのリフは、どこか大陸的な香りを纏っているようです。
晶さんの楽曲となる「Divorce」は、Lamiel流のロッカバラード。
序盤、静かな展開からバンドサウンドに移行するタイミングで、まさかのシャウトが飛び出したことには驚かされましたね。
それ以降は、喪失感たっぷりにメランコリックなアレンジを響かせてくれるので、切なさに浸ることができるのでは。
ただし、この楽曲の肝は、終盤にある。
サビのメロディの裏で、激しいラップ調のバッキングボーカルを重ねて、盛り上げに盛り上げていくのです。
良くも悪くも抑揚のない維那さんの歌唱スタイルを、こういう形でカヴァーしてくるというのが目から鱗で、とにかく演出技法に感心してしまいました。
シークレットトラックとなったのは、デモテープに収録されていた「Eins」の再録盤。
開き直ったようなベタなヴィジュアルロックなのだけれど、なんだかんだ、aie節、あるいはLamiel節とも言えるマニアックなフレーズが急に飛び出てくるので、ミニアルバムの中で浮いているような感じでもないのだよな。
確かに現在の彼の音楽性から踏まえれば、ここまで正統派の楽曲を作っていたのか、とびっくりしないこともないのだけれど、黒歴史ではない若さを体験できるというのも、時間が経ったからこその本作の魅力でしょうか。
ミニアルバムとしてはボリュームが少な目ではあるけれど、内容的には充実した1枚。
名古屋系界隈の中でも個性が強いバンドのひとつなので、入手する機会があるなら、逃さず聴いてほしいものです。
<過去のLamielに関するレビュー>