respect 90's@LIVE HOUS獅子王(2019.11.1) | 安眠妨害水族館

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二部制で行われ、開催直前特番まで用意された90年代V系をリスペクトする企画イベント、「respect 90's」。

第二部に行ってきました。

 

Vo.Hitomi(ウミユリ)、Vo.平一洋、Vo.ice、Gt.祐弥(DuelJewel,ユウヤヤバセ)、Gt.YOSHIHIRO(ex.ギルド)、Ba.Ivy(マクラカ壊死)、Dr.satoshiという面々での二回まわし。

楽器隊はそのままで、ヴォーカリストが5曲ずつ交代で登場するという形態で、セッションイベント風ではあるも転換時間が不要という効率性が、オーディエンス側としては嬉しい限り。

実質30曲超演奏する楽器隊は大変だったかと思いますが、熱量を冷まさずに次に繋げられるという意味では、良い工夫だったかと。

 

当日披露される楽曲は、事前に各ヴォーカリストのTwitterに公開。

しかしながら、第二部では演奏曲のシャッフルが行われ、違いを作っていたようです。

その結果、「MECHANICAL DANCE」が2回演奏され、La'Muleの「ナイフ」がカットされた形。

「ナイフ」も聴きたかったけれど、異なるヴォーカリストでの同一曲の聴き比べ、というのもなかなか味わえないので、プラスに捉えておきましょう。

 

 

トップバッターで登板したのは、Hitomiさん。

キャリア的にトリかと思っていたので、個人的には意外な出順だったのですが、「As if in a dream」、「MECHANICAL DANCE」という90年代を代表する白と黒の鉄板曲でスタートを切る意味では、この配置は正解でしたね。

初っ端、ちょっと演奏にもたつきがあったのが気になったものの、高いクオリティでの演奏に、オーディエンスのみならず、Hitomiさん本人もご満悦の様子。

MCからもテンションの高さが伝わってきました。

 

第一部では平一洋さんが歌った「桜の満開の木の下で」を、第二部ではHitomiさんが。

2019年現在においては渋い選曲となる「Nocturne」も、当時を知っているからこそのセレクトで、どっぷりと90年代に潜っていきます。

どの曲もタイプというか、色味が異なるナンバーなのだけれど、しっかり自分の色に染め上げるHitomiさんのヴォーカルセンスも圧巻。

極端なギミックを付加するわけではなく、自然体に歌う一方で、滲み出てくる90年代の血。

ときに麗しく、ときに狂気じみていて、久しぶりに彼の多面性に触れることができました。

 

経歴的には、MALICE MIZERからの選曲がなかったのが惜しまれますが、ラストは強い希望があってとのことでElDorado。

一応、バンド結成が90年代であれば、楽曲の発表時期にはこだわらないスタンスなのでしょうか。

Fatimaとの因縁や、当時のシーンの邂逅を祐弥さんを交えて語りながら、代表曲であった「砂の王国」を演奏します。

Cメロのない、初期バージョンでの演奏だったのも、きっとこだわり。

これ、Hitomiさんの声質にめちゃくちゃ映えますね。

時代の狭間に埋もれがちだった、ゼロ年代初頭に活躍した王道バンドの名曲。

現代に蘇らせてくれて、感謝すら感じますよ。

 

 

iceさんのパートは、ROUAGEの「Queen」から。

イントロでのクリーントーンのギターの再現性が高く、とても滾ります。

「妄想地下室」や「卍搦め」など、このラインナップの中では比較的若い楽曲をセレクトした一方で、「親愛なるDEATHMASK」を持ってきて、90年代のカヴァー範囲の広さを示したのも、実はこのイベントの醍醐味だったりするのかな。

 

iceさんについては、多少遡って聴いていた節もあるようで、だからこその視点をふんだんに取り入れていました。

現代との歌唱法の違いや、シャウトの特殊性など、分析に基づくオマージュも多々。

呼吸多めのMCにしても、語尾をしゃくりあげるような歌い方にしても懐かしさ満載で、曲はガチ、MCはネタっぽく、という使い分けもiceさんならではの舵切りでしたね。

90年代ガチ勢も多く、デフォルメしすぎると反感を買うリスクもあった会場で、絶妙な駆け引きを成功させて笑いをとっていました。

 

「MECHANICAL DANCE」、「親愛なるDEATHMASK」、「卍搦め」と、後半の暴れっぷりに比重を置いた構成も見事。

役割分担として、煽り曲は自分に任せろ、と言わんばかりの攻め気を発揮して、あの頃のカオティックな空気をイチゼロ年代終盤にもたらします。

リアルタイムだった時代を思い出しつつ、改めて聴くことで新しい発見も見出しつつ。

「卍搦め」って、ライブで演奏されると音源の数倍格好良いのだな、なんてことをバンドの解散から15年以上経って知るなど、新鮮さを感じる余地があったという気付きも込みで、面白かったな。

 

 

トリで出てきたのは、平一洋さん。

相変わらず、平さんは自由でした。

出てくるなり会場にハンドクラップを求めたうえで、演奏するのがMerry Go Roundの「ラ・リ・ル・レ・ロ」ですよ。

当時のノリとか、バンドのイメージは切り離して、あくまで平一洋として当時夢中になった楽曲を披露しようとするスタンス。

この手のイベントで、ここまで引きずられないパフォーマンスが出来るの、リアルタイム勢としては彼ぐらいじゃないですかね。

 

セットリストも独特で、暴れ曲の定番である「奈落の底」や、知名度の高い「脳内モルヒネ」を序盤に使って、「執行猶予3年」を煽り曲に、「土とて...」を締めに起用してくる予測不可能っぷり。

清々しいほどにセオリーを覆してしまうカリスマ性には、もう脱帽するしかありません。

もちろん、奇をてらったわけではなく、この曲順を選んだ意図も感じさせるステージング。

気持ちがしっかりと歌に乗っていて、後半に進むにつれて感情のボルテージが高まっていくのが、はっきりと伝わってくるのです。

イベント中、もっとも知名度が低いであろう(他が高すぎるのでそう表現せざるを得ない)曲を最後に残して、ここまで説得力を与えたという事実に、彼の魅力がすべて詰まっていたと言えるのでは。

 

それにしても、「執行猶予3年」での"ラスト3回!"の煽りが懐かしく感じてしまうとは。

そもそもゼロ年代の中心人物であった蜉蝣を90年代バンドと捉えるべきか、というのは置いておいて、90年代リスペクトのイベントにて、ゼロ年代を象徴するスタイルを、イチゼロ年代の終盤に再現するというオールタイム感。

この曲を聴いているとき、平さんではなく、"てんてん!"と叫びたくなる気持ちが芽生えたのは僕だけではないはず。

 

 

アンコールは、ヴォーカリスト3人が勢ぞろいで、「白い闇」と「Unknown...Despair...a Lost」。

Dir en greyをセレクトするにしても、この曲は玄人すぎるだろ、と。

Hitomiさんによる"栽培野菜ッ!"が聴けるなんて、あの頃誰が想像できたというのか、と。

基本的に、パート分けして交互に歌う形式。

コーラスや語り等の再現してほしいツボの部分を、iceさんがすべて拾ってくれていたので、個人的にiceさんの株が上がりましたね。

 

本当は2曲で終わりだったようなのだけれど(運営に確認しました)、ほぼ平さんのノリと勢いで、予定になかった「残-ZAN-」を即興で演奏。

YOSHIHIROさん、Ivyさんに、序盤で戸惑っていた部分が見られましたが、単純なコード進行のループだったこともあり、リカバリーできていました。

本当に打ち合わせなしか、という盛り上がりっぷり。

年齢層的なものもあって、ノリとしては大人しめだったフロアも、逆ダイの嵐に。

煽りの段取りも良く、結果的に、これがあることで締まりましたよね。

 

自然体で旧型手扇子を繰り出したくなるHitomiさんのリアルタイム感、90年代の熱狂を現代に蘇らせたiceさんの再現性、あくまでオリジナルを貫くことで当時を知らない世代にも伝えることができる平さんのアップデートしたスタイル。

三者三様、会場にいたオーディエンスのすべての立ち位置を包含して巻き込むことができる絶妙な人選で、この手のイベントで陥りがちな自己満足で終わることなく、全員が楽しめるための配慮が尽くされていたのが印象的だったな。

 

ここまでやってくれるなら、懐古主義も悪くない。

そんな風に思えた夜でした。

 

 

Vo.Hitomi

1. As if in a dream (L'Arc~en~Ciel)

2. MECHANICAL DANCE (LUNA SEA)

3. 桜の満開の木の下で (Merry Go Round)

4. Nocturne (DIE IN CRIES)

5. 砂の王国 (ElDorado)

 

Vo.ice

6. Queen (ROUAGE)

7. 妄想地下室 (蜉蝣)

8. MECHANICAL DANCE (LUNA SEA)

9. 親愛なるDEATHMASK (黒夢)

10. 卍搦め (Dué le quartz)

 

Vo.平一洋

11. ラ・リ・ル・レ・ロ (Merry Go Round)

12. 奈落の底 (Laputa)

13. 脳内モルヒネ (Pierrot)

14. 執行猶予3年 (蜉蝣)

15. 土とて... (Si◇ners)

 

Vo.Hitomi、ice、平一洋

en1. 白い闇 (ROUAGE)

en2. Unknown...Despair...a Lost (Dir en grey)

en3. 残-ZAN- (Dir en grey)