斜陽/ヘルタースケルター
1. 斜陽
2. 断罪シンドローム
3. 人間失格
へルタースケルターが2018年に発表した限定シングル。
初回プレス分を即日完売させたため、1曲追加でのリリースとなった2ndプレス盤です。
様々な企画により話題になることも増えた彼らですが、当然ながら本領を発揮するのは音楽。
この「斜陽」で撃ち抜かれたというリスナーも多かったのではなかろうか。
その「斜陽」は、高田馬場~早稲田を舞台に描かれる切ない歌謡ナンバーです。
強みとなるのは、なんといってもGt.御笠ねるさんが紡ぐ、どこかノスタルジックなメロディと、Vo.朝比奈悠さんが描く小説のような歌詞世界。
必ずしも明確なストーリーが綴られているわけではないのですが、心情描写の中にリアリティのある情景をふっと織り交ぜるセンスが抜群で、それがメランコリックな昭和レトロサウンドにぴったりハマるのですよね。
この楽曲を生み出すためにヘルタースケルターは結成された意味があった、と言いたいほどの名曲。
「断罪シンドローム」は、Dr.魅影さんがコンポーズした楽曲。
作曲者が変わったことで、曲の雰囲気も変わり、良いアクセントになっているかと。
激しさが前に出ており、リズムは気持ち良く疾走しています。
一方で、どこか物憂げなメロディが重なり、素直にアッパーチューンとは言いにくい翳りが見られる。
どことなく、それが「斜陽」からの流れに筋を通しているような気がして、バンドとしての軸は既に出来上がっているのだな、と感心してしまいます。
追加されたのは、「人間失格」。
鍵盤のアグレッシブなフレーズにより、お洒落さが前に出ているのが特徴でしょう。
激しさ、疾走感もあるのだけれど、サビになるとメロディアスに開けるイメージ。
方向感を統一しつつ、キャッチーさを加えてきたな、といったところか。
それにしても、「斜陽」といい、「人間失格」といい、太宰治もテーマだったりするのかしら。
とにかく「斜陽」のインパクトに尽きる。
それ以外の楽曲についても佳曲ではあるのだが、どうしても引き立て役に回ってしまった感はありました。
ただし、作品全体での統率はとれており、通しで聴いたときのバランスは悪くない。
1曲入りのシングルとしてドロップされるよりも、2曲あるいは3曲で発表されたことによって、深みを増した部分もあるのですよ。
音質面、技術面での向上の余地は多分にあり、そこを課題ととるか伸びしろととるかで評価は変わってきそうですが、哀愁系好きなリスナーであれば、一度耳にしても良いのでは。
<過去のヘルタースケルターに関するレビュー>