画逆/マクラカ壊死
1. smart dog
2. 漠然と漠
3. 埠頭
4. 霞食ウ
ex-ラッコ、ex-Moranのベーシスト、Ivyさんのソロプロジェクト、マクラカ壊死。
本作は、ライブ会場と通販で発売されたカセットテープです。
サポートミュージシャンに、ex-ChantyのGt.千歳さん、WHITEHEADのDr.大熊 邦夫さんを迎えて制作されたマクラカ壊死の初音源。
満を持してのリリースとなったわけですが、それがまさかカセットテープでの販売になるとは誰が想像したでしょうか。
確かに、このザラついた質感は、CDよりもカセットのほうが再現性が高いと言えるのかもしれませんけれど。
片面に４曲すべてが収録されている仕様。
１曲目の「smart dog」は、オルタナ風のギターと、ダークなボーカルラインが独特の世界観を醸し出しています。
シャウトも含まれていますが、低音でぼそぼそと呟くような歌い方で、おどろおどろしい和風ホラーのイメージと、耽美なゴスのイメージが融合したような不思議な感覚。
キャッチーさは皆無ですが、異質さをアピールするにはもってこいだったのでは。
「漠然と漠」は、疾走感のあるロックチューン。
こちらはメロディアスに仕上げていて、１曲目と比較してだいぶ聴きやすいかな。
ただし、ノイジーなギターが前に出て、ボーカルが少し引っ込み気味なので、全体的にどんよりとした空気が拭いきれず。
クリアな音質であれば透明感すらありそうなメロディラインなのに、敢えてキャッチーにはしないぞ、という頑固さがうかがえます。
この辺り、デモテープ文化だった頃のバンドの自意識にも似ていて、それすら狙った気もするから興味深いのですよね。
「埠頭」は、退廃的なミディアムナンバー。
相変わらずノイジーに突き刺さるギターと、歌うように弾むベースラインとの対比で、聴き手によって明るくも暗くも聴こえてきそう。
ハードさもしっかり出して、ラスト急に疾走するくだりは、ツボにハマったというリスナーも多かったのかと。
ここまでの流れと異なる質感を与えているのは、最後の「霞食ウ」。
クリアでダンサブルなサウンドメイクに徹しており、案外、素直な歌モノになりました。
どちらかと言えば淡々としていて、一気に盛り上げるタイプの楽曲ではないのだけれど、これまで鬱屈した世界観の中にいただけに、より開放的に響く印象。
アウトロのギターソロも効いています。
即完売になったことから、入手は困難になってしまったアイテム。
送料や手数料を踏まえると、やや割高感は否めないものの、それが踏み絵になった部分はありますな。
媒体的にも、販売形態的にも、もう少しハードルを下げても良かったと思わないでもないですが、相応にカセットテープでのリリースに踏み切った意味も感じ取ることはできる。
懐かしくもあり、新しくもあり。
歌唱力はまだまだこれからですけれど、企画力と音楽性については、十分に可能性を感じさせる作品です。