遠鳴り/HOLLOWGRAM
1. 遠鳴り
4人編成となって活動を再開したHOLLOWGRAM。
本作は、1月に開催された単独公演「THE FLUID FAINAL」にて配布されたシングルです。
収録されたのは、一也さんが作曲を担当したミディアムバラード。
繊細なアコースティックギターの音色が印象的で、優しさを帯びたryoさんの歌声を、まるで包み込むよう。
爽やかというわけではないのだけれど、清涼感があるというか、とても落ち着くサウンドなのですよね。
アコースティック風に仕上げられているので、序盤は小さなライブバーで演奏されているイメージ。
とても近い距離感で、囁きかけるような雰囲気で進行します。
ただし、いつの間にか壮大になっているから驚かされる。
リズム体の主張が強まり、ストリングスが入ってくるあたりから、広々とした情景が見えてくるのですよ。
ガラっとアレンジを途中で変えているわけではなく、自然な進行の中で、そんなスケールの移り変わりを堪能できるのが、この楽曲の魅力なのではないかと。
構成としてはコンパクトで、テンポのわりには短い3分程度の尺。
世界が頭の中でぶわっと広がって、無限に続いていくような錯覚を覚えるのに、たったの3分。
プツっと途切れるようなラストシーンの演出も効いていました。
気が付いたら再生が終わり無音になっていて、突如として訪れる取り残されたような喪失感。
これが、たまらなく胸を締め付ける。
音が鳴っていても切なく、鳴りやんだとしても、なお切ないなんて。
音が鳴りやんだ後の余韻が反芻している状況こそ、タイトルの「遠鳴り」だったりして。
アコースティックな味わいにも強みを持つことを証明した彼ら。
配布音源に終わらせるのももったいないので、これを軸にコンセプト作品なんてあっても良さそうですが、いかがでしょう。
<過去のHOLLOWGRAMに関するレビュー>