Heaven’s Call / Dio | 安眠妨害水族館

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Heaven’s Call/Dio - Distraught Overlord

 

1. Lord's Prayer

2. final call

3. Allure

4. PUPPET SHOW

5. 十二月の夜に

 

2005年に結成し、2010年に解散となったDioのミニアルバム。

2008年にリリースされた作品です。

 

ヨーロッパツアーを敢行するなど、海外ファンからの支持も厚かった彼ら。

2016年に期間限定での復活となった際もヨーロッパを回っており、ある種、グローバルなバンドであったと言えるでしょうか。

ex-ハルシオンのVo.mikaruさんや、ex-サリーのGt.erinaといったキャリアのあるメンバーや、後にレミング、Moran、ラッコと渡り歩き、現在はマクラカ壊死と活躍の場を移すBa.Ivyさんなど、当時は若手だったメンバーが融合。

古き良きを踏襲しつつ、懐古主義に陥るわけでもない絶妙なセンスは、このメンバー編成によるところなのかもしれません。

 

音楽性としては、クラシカルな耽美メタルを、モダンなラウドサウンドで表現するアプローチ。

シーンでは脈々と受け継がれているL'Arc~en~Cielの系譜といったmikaruさんの歌唱法も含めて、ラウドに寄せたDと例えると伝わりやすいかと思われます。

 

激しさを提示しつつ、サビではメロディを聴かせるべく広がりを見せていくのが、大まかな構成。

様式美が強く意識されており、1曲1曲がドラマティックに仕上がっています。

もっとも、アルバムにそれだけを詰め込まれると聴き疲れしてしまうところ。

バランスを考えればアクセントを入れたくなるところなのですが、彼らの場合、激しさの部分での見せ方を絶妙に変えてくることで、飽きがこないように工夫しているのが興味深いですね。

 

ミドルテンポでのシャウトの応酬から、メロディアスに展開されていく「Lord's Prayer」。

地を這うような退廃的ムードを漂わせつつ、ミクスチャー的な手法も取り入れた「final call」。

ストレートに疾走していく「Allure」に、タイトなリズムがスリリングさを印象的にする「PUPPET SHOW」。

親和性も考えながら、タイプの異なる激しさの表現を次々に打ち出すことで、上手くラストの「十二月の夜に」に繋げたな、と。

 

この「十二月の夜に」が、ラストを飾るにふさわしい歌モノで。

イントロの段階から、華やかなシンセのフレーズが楽曲を彩ります。

ここまで徹底して激しさを追求していただけに、この曲での繊細なアレンジが際立っており、単体で聴いても相変わらずのドラマティックさなのですが、アルバム全体としてのドラマ性も感じ取れるのですよ。

 

音楽における美学や、バンドとしての世界観を重視するために、ある程度キャッチーさを犠牲にしている部分はありますので、そこは聴き手がどこに重きを置くかで評価が左右されるのでしょう。

ただし、その徹底っぷりがヨーロッパでのツアーを行うに至った強みであったのは確か。

流行の影響を受けない分、10年前の作品であることを感じさせない普遍性を持つこととなった1枚です。