個人作品集1992-2017 デも/demo #2 / 有村竜太朗 | 安眠妨害水族館

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個人作品集1992-2017 デも/demo #2/有村竜太朗

 

1. 幻形フィルム/genkeifuirumu

2. くるおし花/kuruoshibana

3. 憑影と月風/tsukikagetotsukikaze

4. ザジ待ち/zajimachi

5. キュルるル/kyurururu

6. 色隷/sikirei

7. 日没地区/nichibotsuchiku

8. 19罪/jukyusai

9. op.7.憑影と月風/tsukikagetotsukikaze AC Ver.

10. op.8.ザジ待ち/zajimachi AC Ver.

11. op.9.色隷/sikirei AC Ver.

 

Plastic Treeのボーカリスト、有村竜太朗による2ndミニアルバム。

前作同様3種類同時でのリリースとなり、初回限定盤A/Bには、それぞれ収録曲のアコースティックバージョンが3曲ずつ追加されています。

 

1stミニアルバムは1996年~2013年に制作したデモ曲をベースにしていたのに対して、本作では1992年~2017年とレンジが広がった。

要するに、元ネタが生まれたタイミングで比較すれば、実に四半世紀もの開きがあるということ。

Plastic Treeのインディーズ時代のミニアルバム、「Strange fruits-奇妙な果実-」が発表されたのが1995年ですから、これを制作期間と呼ぶのは乱暴だとしても、その熟成期間の長さに驚かずにはいられません。

 

そして、それらが"ボツになっても致し方なしだね"と切り捨てることなんてできないほどの美しさを纏っているから、更に驚かされる。

どの楽曲も、儚く、脆く、刹那的な美学を持っていて、メランコリックというか、ノスタルジックというか、なんとも感傷的にさせられるのです。

聴けば聴くほど、じんわり柔らかく、だけど確実に胸に沁み込んで、心を揺さぶる。

アコースティックバージョンでの余韻も含めて、一本の映画を見ているかのような映像美を感じる音源だな、と。

 

当然、本作制作にあたってアレンジについては詰め直す部分もあっただろうし、もしかしたら歌詞も多少は書き直しているのかもしれない。

しかし、初期のPlastic TreeらしいUKサウンドを彷彿とさせる「色隷」があったと思えば、「19罪」では、近時の音楽性に近いシューゲイザー的なアプローチ。

あえて変化を個性として割り切って出している部分もあって、結果として、そこが魅力的な作品となっているのでは。

変わっていない部分と、成長した部分、どちらもあるから面白いのだ。

 

アコースティックの3曲も絶妙ですね。

本作中2度目となる「憑影と月風」、「ザジ待ち」のコンボにノックアウト。

音数が少ない分、想像が働き、かえって世界観が深まったとも捉えることが出来るでしょう。

雰囲気が変わった「色隷」も含めて、一口にアコースティックと言えどアレンジは一辺倒ではなく、もう一方の初回限定盤も聴いてみたくなる。

ボーナストラックだけ集めて、アコースティックアルバムにしてみても良さそうなぐらいですよ。

 

なお、前回同様、初回限定盤のジャケットに記載されたタイトルは、本人がひとつひとつ手書きしているとのこと。

ブックレットのアートワークにもこだわりが見え、これはCDで手に取りたい、という作品になりました。

もう四半期に渡って浸れそうな1枚。

 

<過去の有村竜太郎に関するレビュー>

個人作品集1996-2013 デも/demo