Midnight Sun / HIRO

Midnight Sun/HIRO

Midnight Sun 3,240円 Amazon

1. 白夜

2. 我

3. 鏡の中の君

4. 反逆のセレナーデ

5. 緑の秋

6. conviction

7. 残り香

8. 祈り

9. under the midnight sun

10. 遥か...

La'cryma Christiのギタリスト、HIROによる2ndアルバム。

前作はギターインストのみだったのに対し、本作では全曲でボーカルにも挑戦しています。

テクニカルなギタープレイと、どこか異国の香りが漂うメロディは相変わらず。

しかしながら、やはり注目してしまうのは、はじめて耳にするHIROさんの歌声でしょう。

TAKAさんのハイトーンとは異なる、ミドルキーの艶やかな声質。

スキルとしては一朝一夕で追い付けるものではないのですが、楽曲が進んでいく中での感情の昂りやダイナミックさなどを意識しているようで、ライブ感が出るような工夫も見られますね。

１曲目の「白夜」から、初期のLa'cryma Christiを彷彿とさせる異国情緒を纏っており、なんとも懐かしい雰囲気。

拍子が掴みにくい独特の譜割りがあるなど、複雑さも見られるのですが、なんだかんだメロディラインは聴きやすい。

歌謡曲的であり、幻想的で神秘的でもあるという従来からの強みを出しつつ、あえてLa'cryma Christiと比較させることでボーカリストとしての存在感を際立たせる意図もあったりするのでは。

一方で、２曲目の「我」は、後期ラクリマのハードロック路線の延長線上といったところ。

それ以降も、ニヤリとするフレーズを織り込みながら、懐かしかったり新しかったりの繰り返し。

「conviction」のイントロを聴いて、これこれ！と思わない当時のファンはいないでしょ、と。

このオールタイム感が、ソロ活動だからこその魅力なのかもしれませんね。

また、チャレンジとして「白夜」と「under the midnight sun」の作詞も担当しています。

ストーリーテリングのようで、急にふっと素の感情が入ってくるあたりが、初々しくもあり、グッとくる要素でもあったり。

ただし、本作において、それ以上に話題を集めたのは、歌詞におけるコラボレーションの部分でしょう。

「22才の別れ」や「なごり雪」で知られる伊勢正三さんが、４曲に渡って歌詞を提供。

「反逆のセレナーデ」においては、歌詞が曲に先行する形で楽曲制作を行うという試みがとられているとのことで、畳みかけるメロディや叙情的なサビに、HIROさんの新しい一面を見ることができました。

五十音を組み合わせた「祈り」の遊び心も、プロフェッショナルが成せる業ですよ。

ex-CRAZEの鈴木慎一郎さんも、３曲で作詞を担当。

レコーディングメンバーにはBa.中村泰造さん、Dr.ササブチヒロシさんが参加しており、その筋のリスナーにはたまらない面子。

どちらかと言えば、当時からのファンに刺さる内容かと思われますが、深みのある音楽性には、新たなリスナーを創出するだけのポテンシャルは十分にあるはず。

クライマックスまでドキドキワクワクが止まらない１枚。