INNOCENCE / シグマメモリア | 安眠妨害水族館

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INNOCENCE/シグマメモリア

INNOCENCE INNOCENCE
991円
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1. Decision in the down

2. 幻想実現Nanomaria

3. Drama

4. Answer

5. Tears

6. 世界改革声明

7. 祭り囃子

8. Misty rain

9. Altair

10. トワイライト

 

ex-iNSOMNiAの7strings.蒼夜さん、Ba.ライさんを中心に結成されたシグマメモリア。

本作は、始動直後にドロップされた1stフルアルバムとなります。

 

いきなりのフルアルバム。

加えて、価格は税込みで1,000円。

とにかく聴いてくれ、という意気込みが伝わってきますね。

 

音楽性としては、Vo.ラビさんの甘い歌声を最大限に活かすメロディアスな楽曲を売りにしているのかな。

ラップ調のパートにぎこちなさはあるものの、歌い上げる部分には安定感があり、聴く人を選ばない癖の少ない声質にはポテンシャルが感じられる。

ドラムはサポートメンバーのようですが、重低音をしっかり支える生音と、ファンタジックな世界観を与える幻想的な同期とのバランスも良く、安かろう悪かろう、とはなっていないのでご安心を。

音質面で、多少コストカットの煽りを受けている気はしますが、インディーズバンドのデビュー盤としては十分。

むしろ、この価格でこのクオリティが維持できるのか、と驚くことになるでしょう。

 

さて、率直な感想ですが、フルアルバムというよりも、10曲入りのシングルという印象を受けました。

しかも、全曲がA面の。

"すべてシングルカット可能!"なんてキャッチコピーを良く見ますが、まさにそれなのですよ。

アルバムとしてバランスをとるように緩急をつけて、メリハリをつけて、というのはあまり意識されておらず、とにかく1曲1曲を全力で作って、出来上がったものを10曲詰め込んだというイメージ。

ここまで徹底されていると、彼らの王道が何たるかは、はっきりと理解できますよね。

 

もっとも、その全力投球っぷりをどう捉えるかで評価が分かれるのかと。

結果として、シングルコレクションでももう少しバリエーションがあるのでは、と思えるレベルで、テンポだったりコード感だったり歌メロだったりで同じようなタイプの楽曲が多くなってしまった。

金太郎飴的にクオリティの高い楽曲が登場してくるとも言えるし、バリエーションが少なく一辺倒とも言えます。

挨拶代わりに、という位置づけを勘案すれば、敢えて方向性を固めているのかとは想像しますが、もうちょっと引き出しの多さを示しても良かったかな。

 

シャウトに頼らず、純粋にメロディの良さで勝負する姿勢は好印象。

個々の楽曲の完成度は高く、押さえるべきところ押さえている洗練度の高さは始動直後とは思えないほど。

アルバムとしてのコンセプチュアルな完成度を過度に求めなければ、この価格なら聴いてみるか、という感性に従って手に取って損をする内容ではないはずです。

あとは、どう王道から崩していくか、どうやってインパクトを出していくか。

今後の動向に注目していきたい新バンドが、またひとつ増えました。