斑 / 浅葱 | 安眠妨害水族館

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斑/浅葱

斑
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1. 天地行き来る小船

2. 月界の御子

3. 畏き海へ帰りゃんせ

4. 花雲の乱

5. 隠桜

6. 螢火

7. 大豺嶽~月夜に吠ゆ~

8. 冬椿 ~白妙の化人~

9. 白面金毛九尾の狐火玉

10. 鬼眼羅

11. 雲の通ひ路

12. 妖刀玉兎

13. 物の怪草子

14. アサギマダラ

 

Dのメジャーデビュー10周年企画第一弾となる、Vo.ASAGIによるソロアルバム。

フルアルバムとしてはキャリア初となる"和"をテーマにしたコンセプト作となります。

テーマに沿ってか、本作では漢字表記である"浅葱"を用いているようですね。

 

過去、胡蝶としてミニアルバム「化蝶夢」をリリースするなど、和風サウンドも引き出しとしては持っていた彼。

Dでは、パブリックイメージもあって単発的にしかこの手の楽曲を披露することができていませんでしたが、ソロとなれば自由度は増すわけで。

濃厚な世界観はそのままに、和楽器も登場する和風メタルを追求したのが本作となるのでしょう。

 

がっつりとバンドサウンドを取り入れていることもあり、音楽性としては、Dの延長線上ともとれる。

少なくとも、打ち込み中心であった胡蝶のイメージとは大きく異なります。

ただし、雅やかなメロディラインに、琴や三味線を生音で組み込むアレンジワークには、確かに和を感じられる。

もちろん濃淡はあって、サウンドだけであればメタル色に特化した楽曲もあるのですが、そこは演出力でカヴァー。

古文調で書き綴られた歌詞は、要約が付属されるほどに本格的で、この内容が歌われることで、多少強引でも"和風"としてまとめあげることに成功していました。

 

トリプルA面であった先行シングルから1曲も収録されず、全曲をコンセプチュアルに書き下ろしているのもポイント。

フラットな状態でアルバムを耳にすることが出来るので、主張の強い楽曲にイメージが引っ張られることなく、素直に浅葱さんの描く物語の中に入り込むことが可能となっています。

もっとも、シングルカットできそうなキラーチューンがないという意味ではなく、1曲1曲を取り出せば、十分に粒ぞろい。

「月界の御子」、「大豺嶽~月夜に吠ゆ~」、「物の怪草子」など、そのままアニメ主題歌になっても違和感がなさそうなキャッチー性の高い楽曲も多いですし、「隠桜」、「鬼眼羅」といったハードで攻撃的なナンバーもインパクトあり。

これらを和メロ全開の雰囲気モノで繋ぎ合わせて、実にバランスの良い作品に仕上がりました。

 

個人的に面白いなと思ったのは、「白面金毛九尾の狐火玉」。

軽快なリズムで和風フレーズを畳み掛けるのだけれど、カオティックに紛れ込む狐の鳴き声がとにかく印象に残る。

和風の音楽、和風の歌詞は、知識があれば誰でも作ることはできるのだろうけれど、狐を模して大真面目に歌い上げることが出来るボーカリストなど、V系シーンにおいて浅葱さんしかいないのではなかろうか。

そのぐらい、音楽の完成度、世界観の完成度に加え、キャラクターとのベストマッチが図られた佳曲であったと言えるのですよ。

 

なお、クオリティの高さもさることながら、豪華なゲストミュージシャンにも注目が集まった本作。

Gt.Ruiza、Gt.HIDE-ZOU、Ba.Tsunehito、Dr.HIROKIといったメンバーたちに加え、ギターには中村佳嗣、DAITA、千聖、HIRO、you、SYU、K-A-Z、aie、咲人、JUN、十夜、Leda、MiA、ベースにはTOSHI、岡野ハジメ、人時、SHUSE、天野攸紀、沙我、亜季、燿、ドラムには真矢、Sakura、MOTOKATSU、LEVIN、淳士、Shinya、TERO、遠海准司、奏-kanade-と、羅列するだけでも卒倒しそうな面々が集結。

バイオリンにはSUGIZO、コーラスには東北三兄弟の繋がりから樹威、yo-kaも参加しており、色々な聴き方が楽しめそうですな。

 

通常盤には、真矢さんの和太鼓を堪能できる「妖刀玉兎」が追加収録されており、導入であるインストナンバー「天地行き来る小船」から、自らの名前を含むクローザーチューン「アサギマダラ」まで、ボリューム満点の14曲。

とにかく、"濃い"の一言に尽きる、圧巻の作品です。

 

<過去の浅葱(ASAGI)に関するレビュー>

Seventh Sense/屍の王者/アンプサイ

Corvinus