生命声明文 / arrival art | 安眠妨害水族館

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生命声明文/arrival art

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1. 正解世界

2. あの空

3. 共犯者

4. 魔法使い

5. ログインパスワード(生命声明文 ver.)

6. 東京ノスタルジア

7. 声明

 

Vo&Gt.坪本伸作、Ba.カムラマサル、Dr.kazuiによるスリーピースバンド、arrival art。

本作は、2017年にリリースされた5thミニアルバムとなります。

 

"心を、描き出す。"がバンドのテーマ。

V系をフィールドとして活動しているわけではなく、普段紹介しているバンドとは毛色が異なりますが、坪本さんが、kαinのボーカリスト・YUKIYAさんのソロ活動にてサポートギターを務めていたり、kazuiさんが、和亥名義でMissalina Reiに在籍していた経歴があったりというプロフィールに、食指が動くリスナーもいるでしょう。

 

音楽性としては、メロディアスなギターロック。

癖が少なく、伸びやかな坪本さんの歌声を活かした"歌モノ"が多いですね。

情景を描くことを意識していることもあってか、色彩に例えるなら淡いイメージ。

ガツガツ攻めるというよりも、丁寧にフレーズを紡いでいる印象です。

 

これまでの作品を何枚か聴いた限りでは、その一歩引いた感のある雰囲気に、パンチに欠けるなという感想を抱いていたのですが、この「生命声明文」には、そんな評価を覆さざるを得ない包容力に包まれていました。

全体的には軽快に疾走するロックチューンを揃えていて、それが終盤のミディアムバラード、「東京ノスタルジア」を引き立てる布石になっている。

スタイルを変えたわけではないのだけれど、情景を切り取って語るだけでなく、寄り添うように語り掛ける作品に仕上がったと言いますか。

アルバム全体でのメッセージが感じ取れる、ドラマティックな構成になっているのだ。

 

ラストの「声明 」も、アルバムのテーマを体現。

軽やかにスタートするのだけれど、サビへと進むにつれて、壮大な広がりを見せていきます。

淡い色彩が、歌詞が沁み込むスピードとシンクロして、鮮やかに輝き出すような感覚は、彼らの音楽におけるひとつの到達点なのだろうな。

 

残念ながら、3月の単独公演をもって無期限の活動休止とのこと。

確かに完結作としてふさわしいものが出来上がったな、と思う一方、せっかくここまでの作品がドロップできたのだから、更なる進化を見たかった、とも考えてしまう。

この歌声を埋もれさせてしまうのは惜しいので、少しでも多くのリスナーの耳に届くことを期待します。