AREA 20th ANNIVERSARY@Zepp Tokyo(2017.6.4) | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

3日間に渡って開催された高田馬場AREAの20周年イベントの最終日に行ってきました。

2日目の彩冷えるも見たかったけれど、この日はホタルとFatimaが限定復活を遂げるということで、こちらを選択。

Zepp Tokyoにいるはずなのに、バックドロップが「AREA 20th ANNIVERSARY」のロゴなので、なんだか不思議な感じです。

 

 

LIPHLICH

 

トップバッターは、LIPHLICH。

この日の出演バンドのキャリアを考えれば妥当なのだけれど、必ずしもホームとは言えないイベントでの1番手にプレッシャーがかからないわけがない。

ただし、このバンドは、逆境でこそ活き活きとするから不思議である。

 

客が重くても関係ない、と言わんばかりにVo.久我さんのアカペラからスタートした「一輪」。

意外な選曲でしたが、広い会場に確かに映えるものです。

普段から盛り上がるライブだけが能ではない彼らだからこそ、魅せるライブを、と割り切ることが可能。

ショウ的な要素を強めに出して、いつの間にかオーディエンスを引き込んでいましたね。

特に、お経Verだった「不条理、痛快、蛇の歌意」の暗転するタイミング、"ああもうやってらんねぇ"の台詞には、ドキっとさせられました。

 

フロント3人、全員が"自分が主役だ"とでも言いたげに主張するステージングが面白い。

久我さんは、ワイヤードマイクにマイクスタンドまでついているのに、前後左右を広く使って行動範囲の制約を感じさせません。

Ba.進藤さんもフリーダムにのたうち回っているし、Gt.新井さんだって一歩も引かない。

これだけ個が強いのに、LIPHLICHとして濃厚な世界観を示してくれるのだから、その成果としてラストの「MANIC PIXIE」が盛り上がるのも必然だったのでしょう。

"お初にお目にかかります、LIPHLICHです。僕たちは今を生きているバンドです。"という彼ららしい挑戦的な挨拶も格好良かったな。

 

1. 一輪

2. マズロウマンション

3. My Name Was

4. 不条理、痛快、蛇の歌意

5. 淫火

6. MANIC PIXIE

 

 

ダウト

 

比較的最近のシングルは聴いていなかったので、知っている曲と知らない曲は半々というセットリストでした。

ただし、そんなことは関係なくテンションが上がってしまうのは、彼らの全身全霊のパフォーマンスがあるからこそ。

いつでも爪痕を残そうと我武者羅に突っ込んでくるイメージで、そろそろベテランの域に入ってくるのに、守りに入る気がさらさらなさそうです。

もちろん、ロックバンドとしては攻め続けてくれるほうが格好良いのだから、何も問題はありませんけれど。

 

LIPHLICHとは対照的に、こちらは盛り上げてなんぼ、というライブ。

それができるという確固たる自信。

経験値が高いだけあって、このあたりはさすがに上手いですね。

欲を言えば、これに広いハコ向けのナンバーも加えたいところ。

押すだけでも楽しさは伝わるけれど、全部終わったあとの余韻としては、メリハリがあったほうが奥行きが増す。

せっかく楽曲も増えてきたのだし、駆け引きをしていきたいところでしょうか。

 

ちなみに、全曲ライブの開催も決まっているのだとか。

100曲以上ある持ち曲、セットリストを順番に覚えるだけでも大変そう。

そりゃ、会場もざわつきますよ。

 

1. シャングリラ

2. DANCE NUMBER

3. 魁swallowtail

4. バクチ

5. MUSIC NIPPON

6. 卍

 

 

ホタル

 

前回のライブは、1年前の同じ日。

偶然なのか、これが縁というものなのか。

現役時代の最大キャパをあっさり飛び越える会場での再復活。

そこに渦巻く感情は、"バンド人生で一番売れてる…!"というMCが物語っていたのでは。

 

これはやってくれましたね。

「サクラチル」から「死にたがりと天」まで、MCなしで淡々と歌い上げる。

盛り上げる気などまったくなく、3曲もの間、棒立ちでステージを見入るだけのZepp Tokyo。

ワンマンだったとしてもどっぷり深く潜り込むゾーンで演奏する楽曲たちを、こんなところで持ってくるかよ、と。

強制的にトラウマを植え付けられるような感覚。

だが、これこそがホタルのストロングポイント。

唯一5曲だけの演奏、そのうちの1曲である「サクラチル」もショートバージョンでと、持ち時間は短かったのですが、その中で何かを残すにはという反骨精神が気持ち良い。

 

Vo.慎一郎さんの歌声は、ブランクを経ても、今がピーク。

その歌唱力、表現力は、Zeppだからといって見劣りするものではないことを証明したし、ライブ感が鈍っているメンバーをカバーするため、Gt.杏太さんがあちこち動き回っていたのも印象的でした。

「怪人二十面相」、「たからもの。」と、最終的にはしっかりお祭り騒ぎにも乗っかって。

11月にはワンマンを予定しているとサプライズの発表もあり、本当にこれから、バンド人生で一番売れるのかも!なんて思ったり思わなかったり。

 

1. サクラチル

2. 9才

3. 死にたがりと天

4. 怪人二十面相

5. たからもの。

 

 

D

 

シンプルな衣装のホタルから、ゴテゴテしたお耽美衣装のDに。

ヴィジュアル系って振れ幅が広いな、と改めて実感した瞬間でした。

 

何より演奏が上手いし、迫力もある。

ステージングも隙がなく、さすがの貫禄を示しています。

ファンタジックな設定を、まるで現実のものとして描くD特有の世界観。

ヴィジュアル系バンドがヴィジュアル系バンドである意味が、しっかりと踏襲されていましたね。

その中で、ずっと前からの代表曲、「闇より暗い慟哭のアカペラと薔薇より赤い情熱のアリア」や「Night-ship"D"」も織り込んだセットリストとなっていたのは嬉しい限り。

あれだけ高音のファルセットを、あそこまで力強く出せるボーカリスト、なかなかいないでしょうよ。

 

最後は、ニューシングルの「Dark fairy tale」で。

イベントライブの最後に、まだ浸透しきっていない新曲を持ってくるというのも、ひとつのチャレンジ。

安定感だけを求めては成長しない、という意志の強さを感じずにはいられません。

 

1. 光の庭

2. 名もなき森の夢語り

3. 闇より暗い慟哭のアカペラと薔薇より赤い情熱のアリア

4. 黒薔薇の騎士

5. Night-ship"D"

6. Dark fairy tale

 

 

LSN

 

ナイトメアのDr.RUKAさんによるソロプロジェクト。

実質的には、Vo.揺紗、Gt.齋藤 紳一郎、Gt.Shinobu、Ba.Sugiyaというメンバーを加えたバンド編成となっています。

 

基本的には、デジタル要素を強めてダンサブルに仕上げた楽曲たち。

これに、パンキッシュなノリの良さや、ポップなメロディを組み合わせて、自由な音楽性を実現しようとしていますね。

そのフリーダムっぷりを、演出面でも存分に発揮。

1曲目の「怪」の演奏を終了すると、"練習終わり!"と、もう一度「怪」のイントロが。

この段階で、当然ザワつくのですが、本当に最後までやりきってしまうから恐ろしい。

 

なお、二回目の「怪」は、ギターソロでギターを弾かずにピック投げに専念していたり、ボーカルもステージングを重視するなど、ラフな雰囲気がありました。

同じイベントで、楽曲の聴き比べができるとは思わなかったですよ、本当に。

メンバーがメンバーだけに演奏面での不安はありませんし、最大のインパクトが頭にあったとはいえ、その後ダレることもなく。

個人的に、この日唯一初見のバンドだったこともあって、楽しんで見ることができました。

 

1. 怪

2. 怪

3. Cruel

4. CRAZY CRAZY

5. Monsters inc.

6. PARTY

7. かみさまのいうとおり?

 

 

Fatima

 

トリはAREAの主、Fatima。

Moran以降はHitomiで統一していた彼も、この日ばかりはKanoma名義となっていましたね。

もはや"俺がAREA"とのことで、成人おめでとうございます。

 

規則的な不規則。

マニアックで難解なサウンドは、はじめて聴いて乗れるようなシロモノではないのだけれど、その中でカチっと決められたフォーメーションやフリによって、一体感が生まれているという不思議な感覚。

気が付いたら熱狂してしまっているのだ。

Towaさん加入後は通っていなかったし、前回の復活時も見ることが出来なかったので、おそらく15年ぶりぐらいとなるFatima。

それでも、何度も繰り返し聴いた楽曲たちを体は覚えているもので、「Blind」のフリとか、滾るものがありましたよね。

こんなところで、まさかの「哀愁の底辺」が聴けたのも嬉しかった。

 

官能的で自分勝手で狂気じみていて、だけど詩的。

何度も"高田馬場AREA!"と煽るので、広すぎる会場が本当にAREAなんじゃないかと錯覚しそうになる。

どんなに騒いだって、上にある西友からクレームが来ることはないのに、何気なく天井を見上げてしまった。

Zeppの会場一面に咲くライターの灯、圧巻だったな。

アンコールでの高速Stickyも含めて、最高のパフォーマンスを届けてくれました。

最後には、"正気に戻らなかったら、またいつか、会えるといいね"と。

Kanomaさんが正気に戻る日なんて想像できないですし、また会えるということでいいんですよね?

 

1. 少女とクローゼット

2. Blind

3. 哀愁の底辺 

4. Humiliate me more, Darlin'

5. ドリー・マーズ

6. Public eyes

7. Candy Strippers

8. Noble King Snake

 

en1. Sticky Flower(高速Ver.)

 

 

各バンド持ち味を発揮して、濃密なイベントとなりました。

転換もスムースで、ストレスなし。

開始時間が早かったこともあって、終わり時間も遅くなりすぎず、とてもいい塩梅でしたね。

ホタルやFatimaはもとより、LIPHLICHをZeppで見ることができたのも、何気に感慨深いものがある。

高田馬場AREA、20周年おめでとうございました。