UNDEAD BEAUTY / KEEL | 安眠妨害水族館

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UNDEAD BEAUTY/KEEL


1. 人型
2. 接吻
3. bring me reason
4. 禁忌
5. 水辺の君に

2016年12月の単独公演にて発表された、KEELの会場限定作品。
後に、通信販売での取扱も開始しています。

ライブ音源にて先行的に収録されていた「接吻」、「bring me reason」のスタジオテイクを含む、全5曲。
通算では4枚目となるミニアルバムは、帰るべきところに帰ってきた、という感触がありました。
これは、まさしく名古屋系。

抽象的な定義で、時代によって変化してきたこのジャンル。
とはいえ、90年代後半~00年代初頭にかけてのシーンを通ってきたリスナーであれば、名古屋系と聞いて思い浮かべる音楽性は、ある程度共通しているのではないでしょうか。
その中核を担っていたVo.ryo、Gt.aieの両名が作曲を手掛けていることもあり、そりゃそうだ、という部分はあるのかもしれませんが、これまでの作品と比較しても、"名古屋系"への回帰色が強い作品と言える。
ダークでメロディアス。
ミディアムテンポの楽曲を主軸としながらも、時折、カオティックな激しさを見せてくれるのです。

重苦しく、じっくりと足を進めるようにスタートする「人型」から、繊細な美しさが辺り一面にじわじわ波及していく「水辺の君に」まで、捨てるべきところはなし。
「bring me reason」は、ファルセットの歌い回しがryoさんらしいとは思うものの、楽曲の構成や音使いは、deadmanを彷彿とさせる。
「禁忌」にしても、妖しく、激しく、どことなく漂うGULLETの匂い。
ここにきて、こんなカードを切ってきたか、と思わず笑ってしまったくらいですよ。

もちろん、当時の焼きまわしという意味合いはありません。
現在進行形でアップデートすべきところはされており、懐かしい、とも少し異なる感覚。
何度も聴くことで深みを増していく遅効性の毒のような味わいは、あの頃から変わらず、ではあるのだけれど。

衝動的なサウンドからはじまって、バラエティを広げるアプローチへ。
そして、そのバラエティのひとつとして提示された原点回帰的な方向性を、今度はコンセプチュアルに凝縮するという策士っぷり。
バンドのスタンスとして、そこまで戦略を考え抜いているわけではなさそうですが、感覚的にこれをやってのけているのなら、彼らの経験値とセンスの高さを讃えるほかありませんね。
この手のサウンドが好きな人であれば、ハマらないわけがない1枚。

<過去のKEELに関するレビュー>
Raison d’être et de sang
Ugly duckling
Float of R'lyeh
R'lyeh
Cthulhu