Lunatic Lover / PENICILLIN | 安眠妨害水族館

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Lunatic Lover/PENICILLIN

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1. Lunatic Love
2. 戦慄迷宮
3. Dead Coaster
4. 見えないナイフ
5. 瘡蓋
6. 月の魔法
7. Stranger

結成25周年を目前に控えたPENICILLIN。
本作は、アニバーサリー第一弾となるコンセプトミニアルバムです。

テレビ番組"有吉反省会"の企画で、富士急ハイランドの「絶凶・戦慄迷宮」のテーマ曲を演奏したことがきっかけになって完成した「戦慄迷宮」をリードトラックに、シングル「Stranger」などを含む全7曲。
コンセプト作品とは言っても、明確なストーリーを置いているわけではないようですね。
あくまで、25周年に踏み出すために、現時点でのPENICILLINを曝け出す意味合いが強いのだとか。

この「Lunatic Lover」の特徴として特筆すべきは、Vo.HAKUEIさんの歌唱スタイルでしょう。
PENICILLINのアルバムで、激しい楽曲がないわけがない。
しかしながら、本作では、そういったハードチューンにおいても丁寧に歌い上げている印象がありました。
勢い任せで男らしく、といったアプローチは実質的に封印し、どこかフェミニンな雰囲気を醸し出す。
それにより、より叙情的な部分に聴き手が注目できるようになると言いますか。

サウンドについても、表現力重視といった傾向は見られ、立たせるところ、引くところのメリハリがはっきりしている気がします。
ミックスの段階で意識したのか、録音環境の影響かはわかりませんが、楽器ひとつひとつの音の粒がよく聴きとれる。
ライブ的というよりも、スタジオ録音的に仕上げてきたな、と。
全力でガツン、というPENICILLINも良いのだけれど、曲や作品を最適解で演出したアルバムというのも聴いてみたかった。
"コンセプト作品"と位置づけているのは、ストーリーやテーマというよりも、バンド側の表現手段にて統一性を持たせている、ということなのかもしれません。

半インスト的な表題曲、「Lunatic Love」こそプログレッシヴ風の構成になっており、チャレンジ要素も強く出ていますが、全体的にメロディをキャッチーにまとめているのは相変わらず。
マイナーチェンジはしていても、本質的な強みはブレていない。
これぞ、長年バンドを継続してきたバランス感覚のたまもの。
例えば、彼らとしては珍しいリズムの「月の魔法」を取り出しても、PENICILLINらしさを感じることができるというのは、実に大きいポイントですよ。

ボリューム的には、やや物足りなさも残ってしまうのだけれど、そこはまだまだアニバーサリープロジェクトの第一弾。
今後の戦略に期待したいところです。
ミニアルバムというフィルターを通して届けられた25周年へのメッセージ。
聴き込めば聴き込むほど、現状維持には満足しないという、今もなお燃え続ける彼らの熱量が伝わってきました。

<過去のPENICILLINに関するレビュー>
Memories -Japanese Masterpieces-
瑠璃色のプロヴィデンス
No.53
God of grind