朱-アカ- / ベティ | 安眠妨害水族館

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朱-アカ-/ベティ


1. 朱-アカ-
2. Я.
3. ヲ洒落男児ニ憧レテ
4. 水殊

2005年に期間限定のプロジェクトとして結成されたベティ。
本作は、ベティ名義では唯一のCDとなるシングルです。
限定2,000枚のトールサイズ仕様で、発売後間もなく完売となりました。

メンバーは、ex-NEVER CRAZYのVo.勇さんと、ex-パニックちゃんねるのBa.たらさん。
半ベティとして、ギターにはex-パニックちゃんねるの翼さんが参加しています。
2006年にバンド編成となり、176BIZとして躍進を遂げる彼らですが、そのデモンストレーション的な活動となったこちらのユニットは、まさに初期衝動が詰まっていると言えるでしょう。

SEである「朱-アカ-」を経て、リードトラックとなるのは「Я.」。
サポートメンバーである翼さんが作曲を担当しているのだが、翼さんは、後に刻と改名して176BIZの正式メンバーに。
この段階で既にバンド編成になることを示唆していたのだな、と。
176BIZの1stアルバム「アトリエ」で再録されていることを考えれば、先行シングルとして捉えてもよさそうですね。

再録バージョンに比べて音質は劣るものの、序盤のシャウトの応酬やギターの尖り具合など、粗削りだからこそのパッションも感じることができる。
激しく攻撃的な部分と、テンポを落ち着かせて歌を聴かせる部分がはっきり分かれたメリハリのある楽曲ですが、洗練されていない強引さが、ある意味ギャップを際立たせているのかもしれません。

「ヲ洒落男児ニ憧レテ」は、タイトル通り、当時シーンで盛り上がっていたお洒落系テイストを強く盛り込んだ楽曲。
といっても、大きくハズしに行くわけではなく、勇さんの声質に映えるようにアクセントとして取り入れたイメージかな。
可愛くポップに、という派生型のオサレ系ではなく、ジャジーでアダルティという、原理的なお洒落サウンド。
結果的に、本作の中で浮いてしまうことはなく、バラエティのひとつとして武器を増やした形となりました。

最後の「水殊」は、アコースティック調でスタートするバラード。
どことなく昭和歌謡を彷彿とさせる哀愁を帯びたメロディに、シンプルなアレンジを重ねていく。
途中からディストーションをかけたギターも入ってきて、ロック色も強まっていきますが、侘しさを伝えるような楽曲の雰囲気はそのまま。
尺が長いので、もう少しドラマティックな展開があっても良かったとは思いますが、最後になって新たなメロディが用意されているなど、飽きそうなところで盛り返す最低限の工夫は施されていますな。

タイプが異なる3曲を収録。
実際、この辺りの音楽性をベースに176BIZはスタートしていくので、源流がここにあったというのは間違いではないはず。
完売しているとはいえ、そこまで高値で取引されている作品ではないので、解散してしばらく経つけれど、176BIZが忘れられないというファンは、ここまで遡って聴いてみてもいいかも。

なお、2015年から活動している同名のバンドとは特に関係はなさそう。
無理やりこじつけるなら、Gt.ルネさんが、176BIZのメンバーで結成するthe Riotts.のサポートギターとして参加していたことぐらいかなぁ。
こちらのベティも、メンバー的には気になるところなのですけれど。