混沌ノ匣 / グリーヴァ | 安眠妨害水族館

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混沌ノ匣/グリーヴァ

¥3,564
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1. Type[Requiem] (SE)
2. 人体実験~君ガ狂ウ迄ノ7日間~
3. 希望ト夜
4. 幻影Syndrome
5. MAD[ism] Night party
6. 血液ゼリィ
7. LOVELESS
8. 少年A
9. in the Blue
10. -273.15℃
11. 自殺サークル
12. ironic sky
13. 道化師ノ唄
14. Genocide GAM
15. 水中沈む透明な匣
16. 鎮魂歌-another birthday-

古き良き時代の継承者、グリーヴァの3rdフルアルバム。
「幻影Syndrome」および「希望ト夜」のMVが収録されたDVDが付属されています。

Dir en greyのオマージュを繰り返すという手法で登場した彼らも、気が付いたら中堅の域に差し掛かってきた。
さすがにネタ切れも懸念されていた中、どんな方向に活路を見出したのか。
そんな問いに対する彼らなりの答えが、この「混沌ノ匣」なのでしょう。

事実上の1曲目となる「人体実験 ~君ガ狂ウ迄ノ7日間~」が、昔懐かしのツタツタ発狂チューン。
最後の最後で「残-ZAN-」のラストのようなセリフが入ってくるので、"やはりそれが元ネタか!"と突っ込まざるを得ないのですが、まずは現状の立ち位置を示し、リスナーを安心させる。
急激に舵を切るのではなく、今までやってきたことも否定せずに残していくことを最初に宣言してくれれば、多少は楽な気持ちで次に進むことができます。

一方で、新機軸の欠片も次々と。
リードトラックとなる「希望ト夜」は、メロディアスさが前に出た王道ナンバー。
ハードな楽曲群に比べて、テンポはそこまで速くないのだが、あえてそういう楽曲をメインに据えたことで、変わることへの意思も見せていくのです。
特に注目すべきは、クリーントーンのギターに疾走するリズムが重なり、儚く切なく仕上げた「LOVELESS」、伸びやかに世界を広げていく歌モノ「-273.15℃」、重さを出しつつ、美しいメロディにもこだわった「水中沈む透明な匣」といった"白系"の楽曲たち。
なんとなく、Ruvieあたりの雰囲気も感じることができるかな。
「-273.15℃」のサビの歌い出しが歌詞も含めてそのまんま、ということもあるのだけれど、まさか、そちら方面に幅を広げていくとは思いもしなかったですよ。

色々やってはいるけれど、ワンマンオムニバスに陥ることなく、アルバムとしてのバランスも見据えるセンスの良さは相変わらず。
「in the Blue」、「Genocide GAME」といった1分台の楽曲を上手くブリッジに使って、全16曲という大ボリュームをまとめあげていますね。
この2曲にしたって、これをベースに4~5分のナンバーに構築することだってできそうな素材。
それをアクセントとして使い切ってしまう贅沢さも、自分たちを客観視している、ないしはプロデューサーが良い仕事をしているということなのだろう。

正直、Dir en greyがDIR EN GREYになったように、マンネリ化したら本家に準じてメタルコア路線に変化していくのだろうな、と予想していただけに、良い意味で裏切られた気分。
あくまで"古き良き"の中でバリエーションを求めていくスタイルなのだな。
「混沌ノ匣」というタイトルや、「道化師ノ唄」をはじめとしたPIERROTを連想させる曲名がいくつかあるので、そちらに進んでも面白かったけれど。

継続は力なり。
なんだかんだ、先人たちのノウハウを吸い尽くすだけでなく、自らの足で切り開く地力がついてきたのかと。
まだまだ成長の余地を残しつつ、現時点での最高傑作となったのではないでしょうか。

<過去のグリーヴァに関するレビュー>
妄想主義者ノ背徳。
黒イ百合ノ花ト×××
終焉
グリーヴァ VS GRIEVA
最後ノ晩餐
鬼ト影
Dead[en]D