ヨクバリーゼ / レイヴ | 安眠妨害水族館

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ヨクバリーゼ [通常盤]/レイヴ

¥2,916
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1. SADISTIC MARCH!!
2. ヨクバリーゼ
3. わりきりララバイ
4. 君レター
5. ラヴストーリーは突然に(悲)
6. Day×Bye×day
7. 形ないモノ

レイヴが2015年にリリースしたミニアルバム。
"欲"をテーマに制作された、コンセプト作品となっているようです。

福岡を拠点に活動していた彼らの、上京第一弾音源。
その心境を切り取った楽曲が収録されているなど、彼ららしい騒がしいサウンドの中に、大人びた雰囲気が出てきた印象ですね。
上京を果たして1発目は勢いよく!といきたいところで、思いのほか、小奇麗にまとめてきたな、と。

導入SEである「SADISTIC MARCH!!」を経て、表題曲である「ヨクバリーゼ」へ。
本作におけるテーマをもっとも象徴した楽曲ですが、タイトルとは裏腹、多くの要素は詰め込まず、シンプルなビートロックに仕上げてきました。
キラキラした同期やロボットボイスにより現代的に加工されているものの、全体としてはストレートでわかりやすい。
タイトル的にもっとわちゃわちゃした騒々しさを想像していただけに、もしかしたら肩透かしとなったリスナーもいるのかもしれませんが、個人的には好印象のスタートといったところです。

続く「わりきりララバイ」は、ひと昔前のお洒落系を彷彿とさせるシャッフルナンバー。
ライブのノリを重視しているこの手のバンドは、概して流行のアップデートには敏感だったりするものですが、この辺りは地方出身バンドらしい、"流行のズレ"があるのかも。
とはいえ、それが奏功していると言いますか、彼らの楽曲の特徴であるレトロ感と結びついて、なかなかハマっているから面白いのである。

「君レター」は、疾走感のある切ない歌モノ。
コンセプトに対して甘酸っぱすぎるのではないかと思うものの、ここまでの流れでメロディの良さをアピール出来ているのも確か。
その次の「ラヴストーリーは突然に(悲)」も、自意識過剰な歌詞や気の抜けたコーラスなどにはおふざけ感が見え隠れするのだけれど、歌メロは歌謡曲ベースのキャッチーなもので、これが好みだったりするから悔しくなるのですよ。
そして、メッセージ性の強いリードトラックである「Day×Bye×day」に繋ぐのだから、完全にギャップにやられた形。
なんだ、素直に良い曲が多いじゃないか。

通常盤のみに収録された「形ないモノ」も、疾走感のあるメロディアスチューン。
ハードな部分も織り込みつつ、サビでは切なく駆け抜け、気持ちの良い余韻を残します。
歌詞は、「ヨクバリーゼ」とリンクする部分も多く見られ、アルバムとしての仕掛けにもなっている点からも、ボーナストラックにするにはもったいない楽曲でしょう。

良くも悪くも、ライブで見る彼らとは随分と印象が違うミニアルバムでした。
"欲"というコンセプトがブラフになってしまっている気がするほど、歌モノ中心で攻めている。
みんなで楽しく的なパーティーチューンのイメージが強かったけれど、なかなかどうして、こういう路線も良いじゃない。
上京を決めた決意を歌詞に綴った「Day×Bye×day」のインパクトが大きいことも相まって、卒業シーズンに聴きたくなる1枚。