1. 歪んだ影の使者
GizeLが2010年にライブ会場と通信販売限定でリリースしたシングル。
同じく１曲入りのシングルとなる「ミノム未来」との同時発売でした。
AibeLLのメンバーを中心に結成したGizeL。
現在はリムキャットで活躍しているGt.クマさん、Dr.まぁさんが在籍していました。
すぅ様ことVo.真乃助さんは、ex-いろはと言えば伝わる層もいるでしょうか。
作曲はクマさんが担当していますが、リムキャットのようなエレクトロ要素は皆無。
レトロな雰囲気を持たせつつ、じめじめと閉塞的な世界観を展開していきます。
もう１枚の「ミノム未来」が、ポップでパンキッシュな楽曲なので、それとの対比もあるのだと思いますが、想像していた以上にダークな方向に振り切っていますね。
彼らの個性は、なんといっても真乃助さんの癖のある歌声だろう。
ハイトーンで、どこか幼さのある声。
ポップな曲に映えるイメージだったのですが、案外、ダークな曲にも似合っているから面白いですな。
可愛らしさ、無邪気さが、かえって不気味さを引き立てる。
場数を踏んで、いろはの頃よりも表現力は増している印象で、最初は抵抗があるかもしれませんが、慣れてくるとこれじゃないと、という味わいに変わっていきます。
ツインギターの使い方も好み。
片方が歪んだサウンドでベタなリフを刻みつつ、もう片方で不協和音を作りにいくというか。
ボーカルの個性に負けないくらい、表現としての気持ちの悪さを演出していて、雰囲気モノには終わらせない工夫が散りばめられていました。
シングル曲っぽさはないのだけれど、だからといって、地味というわけでもない。
そういう意味では、２枚同時で対極的な楽曲をリリースするという判断は間違えていなかったのでしょう。
レクレンズやリムキャットから遡って、という音楽性ではないのかもしれないけれど、いろはを期待して聴くのであれば、相応に満足度は得られそう。
真乃助さんにとっての最後のバンド。
あまり手に入れやすい作品とは言えませんが、"そういえば、いろはって好きだったな"というリスナーは、探してみてもいいのかも。