虚言癖の蝶と不眠症の赤い月 / HURDY GURDY | 安眠妨害水族館

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虚言癖の蝶と不眠症の赤い月/HURDY GURDY


DISC A
1. holy grave
2. BLUE SHADE
3. EDEN
4. HCL
5. 「D」less Sleep~虚言癖の蝶と不眠症の赤い月
6. 骸の花
7. unholy grave
8. グロテスク
9. EDEN(demo tape version)
10.

DISC B
1. holy grave(demo)
2. BLUE SHADE(demo)
3. EDEN (eve)(demo)
4. H2SO4(demo)
5. Dreamless sleep(demo)
6. 骸の花(demo)
7. グロテスク(demo)
8. EDEN(adam)(demo)
9. 藍と紅(HURDY GURDY version demo)
10.

地獄絵のボーカリスト、レアさんによるバンド、HURDY GURDY。
本作は、2002年に発表したものの、生産中止となっていたミニアルバムの復刻盤となります。

単なるリマスターだけで終わらせないのがレアさんらしい。
ボーナストラックを追加して、フルアルバムに。
しかも、完全版Aタイプでは、収録曲のデモバージョン+αが収録された2枚組仕様となっており、とても満足度の高い作品に仕上がっています。
完全版Aタイプが80枚、通常版Bタイプが20枚の受注生産ということで、今後、手に入れるのは困難な音源になりそうですな。

和風ホラー的な世界観を持つ地獄絵とも、レアさんのソロプロジェクトであるSCISSORS GARDENとも異なる音楽性。
ざっくり言えば、LUNA SEAなどが代表格である90年代黒服系バンドの王道路線を、レアさんのフィルターを通して昇華させたといったところでしょうか。
疾走感のあるリズムに乗せてザクザクと切れ込むバンドサウンドは、地獄絵ではあまり目にすることがなかったアプローチであり、地獄絵ファンにとっては新鮮で、一般的なV系リスナーには懐かしく映る楽曲群ではないかと。

レコーディングは2002年ということで、デジタルリマスターは施されているものの、現代のバンドに比べれば音質は劣ってしまうのも確か。
だが、それが当時のシーンの空気感をそっくりそのまま現代に再現させてしまったようにも聴こえてくるから面白い。
ダークで、デカダンで、ゴス要素も織り込んで。
「グロテスク」のようなコテコテすぎる楽曲を、こんなジャリジャリした音質で聴くと、本当にタイムスリップしたような気分になります。

また、デモトラックが収録されたDISC Bも、侮ってはいけないのだ。
合計4バージョンが収録された「EDEN」が象徴するように、アレンジが複数存在するのも、レアさんの楽曲の特徴。
デモバージョンだからといって、単なる未完成のトラックだと切り捨ててしまうにはもったいないのですよ。
タイトルがデモ段階での表記になっているところも、芸が細かいですね。

ボーナストラックとして、「藍と紅」が追加収録。
こちらは、地獄絵の楽曲をHURDY GURDYで音源化ということで、ファンにはたまらない内容。
タイトルにちなんで赤と青で書かれた文字を読み進めていくと、メッセージが浮かび上がるという歌詞カードのギミックも見逃してはいけません。

なお、更にシークレットトラックが。
DISC Aには「DUMMY(studio live)」、DISC Bには「Ⅲ BLIND MICE(demo)」が10トラック目に収録されています。
これだけサービス精神旺盛な作品を、コアなファン向けの作品に留めてしまっているなんて、なんとも贅沢である。

オリジナリティの観点から言えば、地獄絵と比較して弱いのだが、このベタベタ感もいいじゃない。
自由度が高く、洗練されきっていない荒々しさですら魅力となっている一枚。