Le 7e ART 第7の芸術 / KILHI+ICE | 安眠妨害水族館

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Le 7e ART 第7の芸術/KILHI+ICE


1. VELVET
2. EMPT YEYES
3. ROCK STAR
4. Fears of xxx
5. 夜の涙
6. Cry in the Air
7. ANOTHER MOMENT
8. KIRCHE+EIS

1990年代半ば~後半にかけて活動していたKILHI+ICE。
本作は、1997年にリリースされた1stアルバムです。
 
Vo.TARAChan、Gt.UNIによる2人組。
女声ボーカルを要したユニット編成ということで、当時のV系シーンとしては異色な存在だったと言えるでしょうか。
アートワークや音質など、かなり自主制作感が満載。
メンバーのプロフィールやコメントが記載されていたり、黎明期だな、と思わされます。
この内容で、当時は一般CDショップにも並んでいたりしたから驚きである。

音楽性としては、サンプラーやシンセを多用したテクノ、インダストリアル。
ゴスに寄せる意識もあり、ダークで様式美的なアプローチが多いのだけれど、女声ボーカルを活かすためのポップなセンスも取り入れて、といったところ。

トランス風のサウンドメイクながら、ダークな要素を強めた「VELVET」は、不協和音とポップなメロディとのバランス感覚がポイント。
導入的でありながら、彼らのサウンドを端的に表現しています。
インダストリアル色を強めた「EMPT YEYES」も、やはり歌メロはアニソンっぽい。
"EMPTY EYES"ではなく、"EMPT YEYES"が正しい表記なのかな。
「ROCK STAR」は、タイトル通り古臭いビートロックを、彼らのサウンドに置き換えて再現してみたイメージ。
アイロニー的な意味合いもあるのか、時代を感じさせますが、こういうのを女声ボーカルで聴けるのは面白いですね。

「Fears of xxx」では、ボイスエフェクトをかけて、更にインダストリアルに潜っていく。
男声によるシャウトをサンプリング音のように使用していて、アクセントとしての効果もあるか。
「夜の涙」、「Cry in the Air」の流れが、ポップに振り切れる歌モノゾーンだけに、異色さが際立っています。
ラストは、ゴス調のサウンドに語りが重なる「ANOTHER MOMENT」、サンプラーを使って独自の世界観を繰り広げるSE、「KIRCHE+EIS」が続いてフィニッシュ。

TARAChanのアニメ声は、ポップな楽曲をやらせるほうがマッチしているのだが、UNIさんとしては、もっと本格派に近づけたいという意図がありそうで、折り合いをどこでつけるかが難しかったような。
ポップな曲で盛り上げるのかと思いきや、クライマックスに進むにつれてマニアックな雰囲気が強まるので、どこに持っていきたいのか、やや不明瞭になってしまった感はあります。
曲順を工夫すれだけでも、もっと聴きやすかった気はする。

現代では、この手の音楽も洗練されてきましたので、出てきた時代が早すぎたということか。
音楽性にしても、編成にしても、当時のシーンで広く受け入れられるにはハードルが高かったのかもしれませんな。