YφU-FOR ALL NEXT GENERATION- / JILS | 安眠妨害水族館

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YφU/JILS

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1. YφU
2. SOLVED
3. YφU(Reprise)

2000年にリリースされたJILSのシングル。
この頃は、Vo.幸也-YUKIYA-、Gt.舜-SHUN-、Gt.MARIKI、Ba.蓮-REN-、Dr.徹-TOHRU-という編成でした。

「JIL NOIR」、「JIL BLANCHE」と、それまで、対になる2枚の作品をドロップしていたJILSが、黒と白を融合させ、彼らなりの王道を示したのが、この「YφU-FOR ALL NEXT GENERATION-」となるのでしょう。
7月7日にデモテープ「MY DEAR」をリリースしたうえで、8月8日に本作を発表というタイミングの妙もあり、話題性も大きかったように記憶しています。

表題曲である「YφU」は、まさに、JILSのシングル!といった内容。
サビからスタートするポップでキャッチーなナンバーに仕上がっています。
オムニバスにも収録され、初期JILSの代表曲となるのかな。

メッセージ性の強い歌詞と、爽やかな演奏。
白系とソフビ系の両方のおいしいところ取りといった楽曲構成には、"なんだか凄いバンドが出てきたようだぞ・・・"と食いついたライトユーザーを引き込むには十分でした。
一方で、幸也さんの前身バンドであるD≒SIREと比べて垢抜けた感があり、物足りなさのあったコアなファンも相応にいた様子。
その辺りは、バンドもファンも探り探りだった気がします。

その点は、ロックテイストが強まる「SOLVED」が、上手くバランスをとっていた。
序盤は、ダークな雰囲気も出しつつ、スピードに乗って激しめに。
語りとエフェクトボイスを重ねるギミックなど、コテコテ的な手法も取り入れていました。
こちらは、黒系要素をソフビ系のサウンドに混ぜ込んできた、といったところでしょうか。

サビでは、一転華やかに。
極端に振れるのではなく、真ん中に持っていこうとするアプローチの本作においては、ダーク一辺倒にせず、サビや間奏で開ける展開にしたのがハマりましたね。

3曲目は、YφUのピアノインスト。
実質2曲かよ…と思っていたら、レア音源であった「赤い花」がスタートするからびっくり。
デモバージョンということで、フルコーラスではないのだけれど、どんな楽曲かを知れるというだけでも、オフィシャル試聴や動画サイトへのアップが一般的ではなかった時代においては、十分に嬉しかったリスナーも多かったのでは。

安定感も高く、楽曲も良質。
ポップなメロディが好きであれば聴いてもらいたいところなのですが、ネックは値段である。
これで2,000円超は、さすがに手を出しにくかったですよ。
確かに、ブックレットやパッケージは凝っているのだけれど、アーティスト写真は「JIL NOIR」、「JIL BLANCHE」と一緒だし、ボリュームは少なめ。
せめて、「赤い花」がフルバージョンだったら、とは思わなくもないな。

もっとも、中古であれば、大きく値崩れしているのも事実。
あの頃、お小遣いでは手が出なくて見送ってしまった、という人がいれば、改めて探してみても良いかもしれません。
一度聴いたら離れない、メロディの選び方はさすがです。

<過去のJILSに関するレビュー>
LAST【SAD】SONGS
PASSING e.p.
SAD SONGS
MY DEAR