Suite November / TETSU69 | 安眠妨害水族館

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Suite November/TETSU69

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1. WHITE OUT
2. wonderful world
3. Pretender
4. TIGHTROPE
5. 蜃気楼
6. SCARECROW
7. empty tears
8. 15 1/2 フィフティーンハーフ
69.TEZMANのテーマ

L'Arc~en~Cielのベーシスト、tetsuyaさんによるソロアルバム。
現在ではソロ活動はTETSUYA名義で行っているため、TETSU69としてのアルバムは本作のみとなるのでしょうか。

1時間以上の作品は聴いていて飽きてしまう。
それならば、時間も価格もスリム化したアルバムを作ろう、という着眼点から、8曲入りになったとのこと。
リリースは2002年の11月。
これ、12年も前の作品なのですね…

「WHITE OUT」は、後に「WHITE OUT~memory of a color~」としてシングルカットされるナンバー。
シングルでのバラード風のアレンジと比較し、こちらはコーラスワークを活かして幻想的で壮大に。
ほんのり初期ラルクの雰囲気があって、思わずニヤリとしてしまいます。
おぉ、こういう路線で行くのか、と驚いたのも束の間、「wonderful world」はピースフルな打ち込みポップス、「Pretender」はダークでノイジー、「TIGHTROPE」は文字通りタイトなロック調に仕上がっていて、何でもアリっぷりに、また驚かされた。

2ndシングルの「蜃気楼」が、バンドサウンドの攻撃性とインダストリアルな打ち込みが激しく絡み合ったハードなナンバーに仕上がっていて、もっともお気に入り。
ファルセットが混ざるサビのメロディも耳に残る。
こういう曲調は、ラルクではやらなそうで、一方でV系ファンへのアピール力もある、ソロならではの発見なのだろうな。

デカダンな世界観を持った「SCARECROW」、ストリングスをメインに持ってきた「empty tears」と、雰囲気モノで繋ぐと、ラストはメロディの良さを最大限に活かしたバラード、「15 1/2 フィフティーンハーフ」。
曲数を絞ってコンパクトにしたからこそ、バラエティの豊富さが浮き彫りに。
最初から最後まで似たような楽曲がありませんでした。

これだけ、様々な音楽性に手を広げているにも関わらず、全部が"らしい"のは、彼のメロディセンスのたまもの。
あのキャッチーな歌メロさえあれば、サウンドの方向性が多少散らばっていても、ひとつの音楽として統一感を持たせることができる。
もっとポップ一辺倒で行くのかと予想していただけに、ダークな楽曲が相応に採用されていたのも嬉しかったですね。

留意点としては、やはりボーカルスキル。
本職ではないとはいえ、複雑な楽曲や、バラード等の声の伸びを要求されるナンバーでは厳しさが目立ってしまう。
また、リカットも含めれば、本編8曲中、実に5曲がシングル曲と、アルバム曲の少なさも、人によってはネックになるのかも。
1時間を超えると飽きるなんて言わずに、ボリューム満点のアルバムを作ってくれてもいいのに…と考えてしまいます。

まぁ、どうしてもラルクとは比較してしまいますし、感じ方もそれぞれ。
十分に良質のポップロックが詰まっているのは間違いないわけです。
中古市場にて投げ売り状態であることも踏まえれば、案ずるより買ってみて、でいいのかと。

なお、シークレットとして、69トラック目に「TEZMANのテーマ」が収録。
デジタルサウンドによるSEなのですが、ワンフレーズだけのボーカルも入ります。
シングル「15 1/2 フィフティーンハーフ」に収録されたオリジナルよりも尺が長く、こちらが完全版となるのかしら。
この辺のギミックまでこだわる辺りも、tetsuyaさんらしいですよね。

<過去のTETSU69(TETSUYA)に関するレビュー>
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