Heart / TOON-FACTORY | 安眠妨害水族館

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Heart/TOON-FACTORY

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1. Heart
2. Winding Road
3. Squall
4. 憂鬱と雨
5. Last Scen
6. ―FD31D27irst end―

MEJIBRAYのGt.MiAさんが夢叶名義で在籍していたTOON-FACTORY。
Ba.レガさんはSRASH NOTES GARDEN、Vo.ひかるさんはI'Zで活動中です。

当初は、"トゥーン工場"という表記を用いていた彼ら。
本作は、メンバーチェンジを経て、再攻勢をかけるために短いインターバルでリリースされた2ndミニアルバムです。

音楽性としては、ツインギターによるハードな演奏を武器としつつも、メロディを第一に捉えるポップロックと言えるでしょうか。
Gt.雫さんが作曲を担当した表題曲「Heart」は、そんな彼らの王道ナンバー。
同期も使用しているが、バンドサウンドも効いていて、ポップさを求めつつ、弦楽器隊は重厚です。
綺麗にまとめすぎているきらいはあるも、若いバンドという触れ込みらしからぬ安定感がありますな。

一転して、「Winding Road」は捻りが効いている。
フェードインするようにスタートすると、ラップパートがメロディ部分と同等程度に取り入れられたミクスチャーチューンを展開。
ハードでゴリゴリなヴィジュアル系サウンドと、ミスマッチとも思えるラップを融合させ、新時代を告げるような楽曲に仕上げています。
サビのメロディがやや地味ではあるが、十分なインパクトを残していく。
ちなみに、作曲者の"阿津翔也"は、MiAさんの本名とのこと。

続く、「Squall」は切なさの漂うミディアムナンバー。
MEJIBRAYの「醜詠」に収録されていた「嫉妬」の原曲にあたる楽曲です。
歌詞や歌メロが書き換えられているので、同期やオケのイメージは近いにも関わらず、意識しないと気付かないかもしれませんね。
「嫉妬」を聴いてしまった後だと、メロディラインが無難に感じてしまうところはありますが、ここは、違いを楽しみたいところ。

「憂鬱と雨」も、切ないデジタルサウンドからスタートする楽曲。
ダンサブルなリズムと、哀愁を帯びた歌謡メロディの組み合わせが、90年代ポップス的な雰囲気を出しています。
歌モノを続けてくるのは意外でしたが、タイプとしては異なっており、バラエティは確実に広がっているのかと。

クライマックスは、壮大なロックバラード、「Last Scen」で。
演奏については、しっかり重低音を効かせることを前提に、メロディはポップさを追求していて、一般層にも響きそうなわかりやすさ。
過剰に演出することもなく、5分程度にシンプルにまとめたのが奏功。
インストである「―FD31D27irst end―」での締めに、スムーズに繋げました。

前半をハードに、後半を歌モノに。
こういう構成にした意図はわかりませんが、なかなか面白い曲の配置である。
王道から始まり、少しずつ違う顔を見せていく中で、いつの間にかメロディを大事にするバンドという印象が植え付けられてしまう。
ハードな曲が後半にないバランスの悪さを包含しているものの、進化の過程という位置づけであれば、このアプローチは策士だな、とも思います。

あとは、王道路線のナンバーで、インパクトがあるものが出せれば。
楽曲単体では、パンチ力に欠けてしまっているのも事実。
「Heart」も佳曲ではあるし、「Winding Road」も効いているので、その間に、ガツンとくるキラーチューンが入っていれば、言うことなしだったかな。
若い才能が花開く前。
MiAさんとともに、メロディメイカーであった雫さんは、現在は音楽活動をしていないようで、それが残念。