「マグロに賭けた男たち」@TSUTAYA O-EAST(2014.7.19) | 安眠妨害水族館

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Jin-Machineの全国ONEMAN Tour「マグロに賭けた男たち」TOUR FINALに行ってきました。
彼らの単独ミサとしては、最大規模の会場となるTSUTAYA O-EAST。
まったく埋まっていないとメンバーが焦っていた節もありましたが、なんだかんだ、ある程度は集まっていたのではないかと。

個人的に、Jin-Machineのワンマンは久しぶり。
約1年間でセットリストも大幅に入れ替わっており、魅せ方のバリエーションも増えていて、素直に成長が伺えるライブだったと思います。
見ている頻度によって、その辺りの印象が異なる部分もあるのでしょうが、去年感じていたライブのパターン化や閉塞感は、打ち破れていたのではないでしょうか。

今回のツアーから新しくなったオープニングSEで順番に登場すると、スタートは配信シングルとなっていた「New Life」から。
事前に聴いていなかったのですが、序盤はV系サウンドを踏襲しつつ、サビではポップでパンキッシュに開けていく、彼ららしい楽曲。
モッシュパートこそあるが、歌モノ要素が強い「Friends」、最近、暴れ曲の位置づけで定着しつつある「友達になろうよ」と続けていきます。
この辺り、昔からの代表曲ではなく、比較的新しい楽曲でオープニングを組んできたというところで、一歩進めようという意思を感じました。

勢いをつけたところで、コントパートに。
星子 誠一さんに扮したMC.featuring16さんが、星子 誠一朗として登場。
小ネタを織り交ぜた開会の挨拶を執り行うと、「父に捧げる羅布甦泥」に繋げる流れ。
これも初めて聴いたのですが、メタルコアバンドが世界観重視でやりそうなミディアムナンバーに演歌調のメロディを乗せる荒業で、必ずしもV系畑出身ではないメンバーのフィルターを通すと、面白いことになるのだな、と感心してみたり。

その後も、 誠一朗スタイルのまま数曲を披露。
「妹コントローラー」では、秋葉原のオタクダンサーズや、後輩バンドHERe:NEのメンバー等が乱入しての乱れ打ち。
ワンマンでのお祭り感覚を増していきます。

ここで差し込まれたのが、コント「マグロに賭けた男たち」。
ツアー中、公演ごとにシーンを進めていくという試みで、全通しないとストーリーが補完できないという鬼設定なのですが、さすがにファイナルということで、スクリーンにてこれまでのあらすじがダイジェスト的におさらいされていましたね。
野々村議員ネタで天丼していくなど時事ネタを取り入れ、過去のワンマンでやっていたスケッチブックでの大喜利に比べて、テンポが良くてリスクも少ない。
まさかの夢オチでブーイング・・・というところまで織り込んでのネタなのだろうな。

このワンマンを目掛けて作成された「マグロに賭けた男たち」、「マグロリア」の2曲も、ここで発表。
間奏では、会場内にマグロのぬいぐるみをばら撒き、オーディエンスがステージに投げ返すことで釣り上げるというアトラクションを行っていました。

更に、「suffer」、「大相撲ダイジェスト」など、中だるみをさせないように代表曲を滑り込ませた中盤戦。
この部分で特筆すべきは、オカンキャラで知名度を伸ばしつつあるHERe:NEのボーカリスト、"霜降り”和鬼子さんが、デュエット曲、「三人目の浮気」の女性役として登場したことでしょう。
"美少女ボーカロイド・岡音ミツ"という前フリで、出てきたのが、初音ミクコスの和鬼子さん(大きなしゃもじ付き)という。
出オチでもあり、きちんとボーカリストとしても役割をこなせるわけだから、本当にズルい隠し玉です。

さて、ここでワンマン恒例のソロステージタイム。
Dr.木村さんや、Ba.水月さんが各パートにおけるソロを披露するのがお決まりで、最近はGt.ひもりさんが、他のパートでのソロもこなすという演出が増えてきている。
今回はどう出るか、といったところだったのですが、登場したのが、破壊担当のあっつtheデストロイさんだったからびっくり。
空間系のエフェクターを駆使して、ノイジーなギターフレーズを奏で、オーディエンスを沸かせていました。

もちろん、木村さん、水月さんも魅せ場を作り、ひもりさんがドラムを叩こうと割って入り・・・というお約束も噛ませつつ、演奏力もしっかり持っているバンドであることをアピール。
なぜか挿入されたfeaturing16閣下のダンスソロは、サーカスにおけるクラウンの役割をしっかりこなし、演奏だけでは付いて来れないライトユーザーにも笑いを提供できるコンビネーションでした。

クライマックスでは、サブステージにもう1セット、ドラムセットが登場して、木村さんとひもりさんでツインドラム(合間に、閣下のパチパチパンチが挟まれるので、トリプルドラムという見方も可能)のセッションを行うというこの日一番の演出。
飽きさせないで演奏をしっかり聴かせて、そのうえで楽しませる。
ネタバンドも、ここまで演奏という手法でエンターテインメントが構築できるなら、もはや、バンドではなくサーカスですよ。
特殊効果で派手にするのではなく、こういうところにお金を使っているのは、個性化やバンドとしてのこだわりが見れて、好印象でした。

ラストスパートは、「ヘルズキッチン」、「さよならアキラメロン」と畳み掛けて。
本編は、代表曲である「さよならアキラメロン」で終わりということで、気持ち良く、清々しく、最後のフリも含めて締めくくった・・・はずだったのですが、閣下の「なんちゃって」という台詞から、イントロが演奏されたのは、まさかの「救声」。
こういうサプライズは大歓迎。
特に、暴れ曲の中では、ダントツで「救声」が好きなので、この裏切りは嬉しかったです。

アンコール前には、長めのMC。
ここで言われて気付いたのですが、本編では、コントはあっても、フリートーク的なMCは一切やっていなかったのか。
その甲斐あって、ボリューム満点ではあるも、進行がスムーズで、効いていたのですな。
もっとも、ツアーを通しての感想など、ワンマンだからこそ喋ってほしいというニーズもあるわけで、アンコールMCは、結構長めにとられていましたが。

アンコールは、「お野菜天国」、「環境デストロイ」と激しいナンバーを立て続けに演奏し、バラードの「ばいばい」でクロージング。
この「ばいばい」が、とてつもなく良かった。
良くも悪くも、音源通りに歌う印象があった閣下でしたが、この楽曲だけは、感情の込められ方が違う。
こんなに気持ちの入った閣下の歌声は初めてと感じるくらい、熱が入っていたのですよね。
ライブで化ける曲があるというのは、これまでの経験からも知っていたのですが、まさか、Jin-Machineで、しかもバラードでそれを痛感させられるとは。
悔しいような、嬉しいような。

冒頭で、彼らが成長したと書いたのは、単なる演奏技術やステージングのスキルの話だけではなく、スタンスの部分も含めて。
これまでは、"笑わせる"というのが絶対的な価値観だったように思うのですが、この日は、"興味深さ"という意味での面白さを追求するようになったイメージを受けました。
何でもかんでも笑いに繋げるのではなく、ここではシリアスな部分を見せる、ここでは泣かせるための演出を考える等、全体的なバランスを意識しながら、最終的に笑いに結びつけるようなライブ構成に変わってきたな、と。

終演後、ニューシングルのリリースや、主催ツアーの発表もあった彼ら。
ライブに向けて鬼龍院翔から贈られた花には、「二人で話すときは引くくらいバンドのことに真面目なJin-Machine featuring16様へ」と添えられていましたが、実際、先のことを考えながらバンドを動かし始めた感がありますね。
次のワンマンは、どのくらいの規模になるのだろうか。
まだまだ道は平坦ではありませんが、上を目指してほしいものです。