MYTH -遥かなる旅路- / EMIRU | 安眠妨害水族館

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MYTH -遥かなる旅路- (通常盤 ~シネマティック・エディション~)/EMIRU
¥3,045
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1. 闇の行軍 -グリモア三国同盟-
2. Thoth
3. Massiah -遥かなる夢の記憶へ-
4. アレクサンドリア王宮にて
5. セティス演説
6. グリモアの戦い
7. 世界浄化の日へと...
8. 追憶の花
9. 雪の涙、溶ける日まで...
10. PrincessFine -ネフェルトゥムの竪琴-
11. POISON ROSE -儚き運命の再会-
12. オシリスとの約束
13. 亡き王女に捧げる雪の協奏曲 第1番イ短調 -ハトホルの角笛-
14. 世界の為に。-星落、再会の丘-
15. 黒い雨
16. 千年の雨
17. 伝説から神話へ

ex-LAREINEのEMIRUさんによる、1stフルアルバム。
CD2枚組みの"ピンク・ボックス・エディション"と、ドラマ仕立てのナレーションや台詞が入った"シネマティック・エディション"の2種同時発売となります。

"ピンク・ボックス・エディション"のほうが収録曲が多いのですが、追加曲はインストバージョンが大半ということで、より世界観を楽しめそうな、"シネマティック・エディション"を購入。
ゲストキャストを擁して、楽曲の合間に、または、イントロ等にラジオドラマを盛り込み、ひとつのミュージカル風に仕上げたといったところかしら。
全部で17トラックありますが、歌モノは10曲程度で、残りはドラマパートが中心です。

気になるボーカリストは、ANUBISのメンバーでもある壱さん。
ANUBISの楽曲も収録されており、ストーリー的な継続性もあることから考えれば、ANUBISの延長線上と捉えるほうが妥当かと。
構想3年とのことで、バンドでは行き詰ってしまった部分を前に進めるために、ソロ名義での発表になったという側面もあるのかもしれませんね。

楽曲としては、非常に耽美。
煌びやかでメロディアスなものばかり。
LAREINE時代の旧友であるKAMIJOさんが主宰するSherow Artist Societyからのリリースということで、どうしても比較してしまうのですが、KAMIJOさんが時代に即して、メタル要素を強めてシーンの中における露出を保ったのに対し、EMIRUさんは、LAREINE時代からの音楽性を貫いているという印象を受けました。
ロマンティックで、中世ヨーロッパの物語的で、メロディにはキャッチーさがあって聴きやすい。
しかも、ストーリーアルバムというのだから、嫌でも、名盤である「フィエルテの海と共に消ゆ」を思い出してしまいます。

もっとも、世界観へのアプローチとしては、こちらのほうが踏み込んでいる。
ドラマCDには、あまり馴染みがないので、どのレベルのクオリティなのかを語ることはできませんが、声優を起用しているだけあって、V系バンドによくある棒読みの寸劇や、ボーカルによるナルシスティックな語りだけで終わってしまうことがないように工夫されています。
これはこれで、聴いていて恥ずかしくなる部分もあるし、やりすぎと思う人もいそうですが、歌詞を読み込まなくても、それなりにストーリーを追えるというのは、お手軽な気もする。
「フィエルテの海と共に消ゆ」が、じっくり作り込まれた長編小説なら、こちらは、ライトノベルといった感覚。

ストーリーも、そこまで複雑なものではない分、クライマックスに向けての衝撃度には欠けますが、ベタに盛り上げるのも悪くはない。
英語でのナレーションと、日本語での語りを重ねる部分については、もう少しレベルを調整してほしかったですけどね。
声が重なって、台詞が聴き取りづらくなってしまっているのは、なんとも残念。

言い方は悪いけれど、LAREINEを引き摺っている人には、おススメな一枚です。
VersaillesやKAMIJOさんのソロではしっくりこなかったという層も一定人数いそうですし、ニッチではあるけれど、ニーズはあるのでは。
"シネマティック・エディション"の場合、曲にまたがって台詞が入ったりするので、流れでじっくり聴きたい人向け。
好みの楽曲だけをリピートするタイプのリスナーは、台詞のない"ピンク・ボックス・エディション"が良いでしょうか。