ANGEL JESUS dieS in EDEN / dieS | 安眠妨害水族館

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ANGEL JESUS dieS in EDEN(2ndプレス)/dieS
 

1.in my head
2.侵入-UNDER THE NIGHT CRAZY NIGHT INTO THE NIGHT-
3.分身
4.fucker-angel's voice mix-
5.high-裸-night
6.die
7.死界
8.新生児
9.幻影
10.シャーマン-fall in jesus mix-
11.ANGEL JESUS dieS in EDEN
12.birthday(ボーナストラック)

dieSの1stフルアルバムである「ANGEL JESUS dieS in EDEN」の2ndプレス盤。
デジタルリマスタリングを施したうえ、ボーナストラックとして、配布音源であった「birthday」を追加収録。
2011年に再リリースとなった作品です。

内容は、とにかく渋い。
本当に1stなのかよ!と思うほど、深みと余裕を感じられます。
ガツガツ攻めるのではなく、淡々と仕事をこなしていくような落ち着きっぷり。
もちろん、ビジネスライクという意味ではなく、求められた役割を把握し、徹底的に演じているという印象なのです。

抑揚の少ない、ゴシックで退廃的なロックンロール。
ドラマティックなメロディを用いるのではなく、フレーズの持つ雰囲気で世界観を構築していくタイプの楽曲が多く、ボーカルも、それに合わせて無表情的。
しかしながら、感情の機微が込められていないかといったら、そんなことはありません。

じっとりと重苦しく、だけど、ときにカミソリのような切れ味を見せる演奏は、言葉にはできない微妙な変化を伝えている。
ヘヴィーな部分では隙間のない轟音を、空虚さを表現したい部分では繊細なリフを重ねた空間系のサウンドメイク。
オケだけを聴けば、十分にエモーショナルな楽曲も、ちらほらと。
こういった切り替えを、自然に嫌味なく使いわけているのが、本作が落ち着いているように見える一番の要因なのだろうな。

中間に、「die」というインスト曲を挟んだことで、一辺倒になってしまいがちな音楽性に、アクセントを加えているため、アルバムとしての流れも良い。
ミニアルバムを2枚作って、インストを緩衝材として挿入、というイメージでしょうか。
前半はダークでデカダン、後半はロックテイストが増して、感情の動きがわかりやくなっています。
それぞれが、コンセプトにより、しっかりとまとめられているうえ、クライマックスに行くにつれ盛り上がるような一連のフローにもなっているのが、ニクいところ。
最初はとっつきにくいと思わせて、聴き終わったら、なんだかんだで入り込んでしまっていたという状況を作り出してしまう。
あざといくらいに、格好良い。

Vo.荒瀬さんの声質もあってか、BUCK-TICKが好きな人に、特に受け入れられているようですね。
暗くて、官能的で、耽美。
確かに、これだけの世界観を作ってこられたら、期待感が膨らむのも納得ですけれど。
1周目のインパクトは弱いかもしれませんが、時間とともに聴きどころが見つかるスルメバンド。

ちなみに、ボーナストラックの「birthday」は、彼らにしてはメロディアス要素が強いミディアムナンバー。
序盤は、低音ボイスを使ったメロディラインが主。
高らかに張り上げたくなるところで、低音に帰ってきたりするため、とても焦らされるのですが、それにより、壮大なサビでの開放感が、際立っているのも事実。
再生を暗示させる歌詞もさることながら、締めにはふさわしい楽曲で、追加収録とは思えないほど、馴染んでいます。

1stプレスは聴いていないのだけれど、音質が向上していることや、「birthday」の存在感があれば、レアな初回盤にこだわらず、こちらを手に取るべきでしょう。
皮肉な言い方ですが、素直に本作を良作だと認識できるという意味では、初回盤を買いそびれていて良かった。