SMILE / L’Arc~en~Ciel | 安眠妨害水族館

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SMILE/L’Arc~en~Ciel
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1. 接吻
2. READY STEADY GO
3. Lover Boy
4. Feeling Fine
5. Time goes on
6. Coming Closer
7. 永遠
8. REVELATION
9. 瞳の住人
10. Spirit dreams inside

L’Arc~en~Cielの9thアルバム。
2年半の活動休止期間を終えた彼らが、2004年にリリースした作品です。

本作は、ラルクのアルバムの中でも、もっとも賛否両論が巻き起こった一枚。
アメリカン・ハードロックの意識が強まったうえに、全体的にはポップなコーティングが施されており、彼らの代名詞でもある、所謂"白系"の音楽性は影を潜めてしまった。

この傾向は、活動休止前にリリースされた「REAL」の頃から、既に顕在化していたものではあるのだけれど、復活に伴う期待の高まりも相まって、それぞれが求めていたラルク像との乖離が明確になったという人が多かったのも事実。
大御所バンドに音楽性の変化があったとなれば、この反応は必然というべきものなのでしょうけれど。

しかしながら、完成度が他の作品に劣っているかと言えば、必ずしも、そんなことはない。
僕自身、最初に聴いたときは、物足りないという感情があったのは確かなのだけれど、何年も経ったうえで、改めて触れてみると、本作ならではの良さも見えてくるもので。

この「SMILE」は、メンバー各人の個性が、ラルクとしてもっとも強く還元された作品と言えます。
つい最近まで、ソロ活動に精を出していたメンバーたちが、再集結しているのだから、当たり前と言えば当たり前なのですが、ラルクの音で、それが鳴り響いているのは、後にも先にも本作だけ。

hydeさんが作曲したナンバーは、洋楽意識のハードロック色が強く、「Lover Boy」は、kenさんがソロ活動の中で見せていたメロディセンスが際立っている。
tetsuさんの楽曲は、相変わらずメロディアスでポップだし、yukihiroさんがコンポーズした「REVELATION」は、無機質で個性的。
それぞれのソロ活動を聴いたときに感じた、「これをラルクで聴きたい!」という願望を、体言してくれていると言っても良いかもしれません。

個人的には、「Coming Closer」で、それらを踏まえた"L’Arc~en~Ciel"の音楽に帰結しているところも、ポイントかと。
アルバム曲のベクトルが様々な方向を向いているのは否めなくとも、一本の軸を、この楽曲で通している。
シングル2曲と、この「Coming Closer」を中心として、衛星のように、それぞれの楽曲が散りばめられていると考えれば、案外、悪くないバランスだと思えてしまうから不思議なものです。

ただし、ボリューム的な面や、アルバムを通して聴いたときのドラマ性に欠けるという部分はネックでもありますので、好き嫌いが出てくるのはいたしかたない。
粒は大きいけれど、名盤と呼ぶには、説得力が不足しているような。
数あるアルバムに触れる中で、こういう楽しみ方もあるんだよ、と提示してくれる作品と捉えるのが、一番ストレスのない聴き方でしょうか。

ちなみに、発売された時期が悪く、コピーコントロールCDなのがなぁ。
後に発売された再販盤は、これが解除されているようなので、今から買うのであれば、再販盤をおススメします。
アメリカ盤は、CCCD仕様ではないうえに、ボーナストラックで「READY STEADY GO (hydeless version)」が収録されているようなので、こちらを探してみても良いかもしれません。

ラルクには、他に名盤がたくさんありますので、まずは、そちらを先に聴いてください。
その中で、ときどきアクセント的に聴きたくなる一枚として、横に置いてみてはいかがでしょう。
全部が全部、文句なしの名盤だったら、語られることすらなくなってしまう。
長いキャリアを持つバンドには、本作のように、評価が分かれるアルバムも大事だったりするのです。

<過去のL'Arc~en~Cielに関するレビュー>
BUTTERFLY
P'UNK IS NOT DEAD(P'UNK~EN~CIEL)
DUNE
The Best of L'Arc~en~Ciel c/w
HEART