299792458 / 後藤まりこ | 安眠妨害水族館

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299792458(初回生産限定盤)(DVD付)/後藤まりこ
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1. HARDCORE LIFE
2. ままく
3. M@HφU☆少女。。
4. うーちゃん
5. ゆうびんやさん
6. ドローン
7. ユートピア
8. あたしの衝動
9. 299792458_TOKYO-U

ex-ミドリの後藤まりこの1stフルアルバム。
「299792458」は、光の速度。
これを「ごとうまりこ」と読ませてしまうらしいです。

ある種、これは問題作でしょう。
破壊的衝動に溢れていたミドリを唐突に解散させ、問題児っぷりを知らしめていた彼女が、満を持してのソロデビュー。
その内容が、ここまでガーリーなポップスになっているとは、誰が想像していただろうか。

ミドリの代名詞であった、狂気を感じるくらいに荒々しく、絶叫さえも厭わないボーカルスタイルは、時々、楽曲の盛り上がる場面で顔を見せる程度。
アレンジ的にも、美しいピアノの旋律が重なってくるなど、面影を残す部分は見られるものの、キュートでポップなフレーズに特化した楽曲構成で、類似性よりは、相違点に驚かされるばかりです。

最初は、どこで捻くれてくるのだろう、という耳で聴いていたのですが、次第に、それが無粋だと気づいていく。
YUKIを彷彿とさせる、ロリータボイス。
予想外に丁寧にメロディを歌い上げる彼女の歌声に、徐々に聴き惚れていくようになってしまう。

言ってしまえば、個性としては薄まった。
その辺にいるポップアーティストや、アイドルに歌わせたって、そこまで違和感はなく、ミドリのように、後藤まりこが歌わないと形にならないという独自性がある音楽性ではありません。
しかし、だからこそ、インパクトが大きいというのも面白い。
毎回毎回、このサウンドで衝撃を与え続けることができるものではないにしても、1stアルバムでこれを持ってきてしまうのは、狙ってるのかと邪推したくなります。

さて、コピーなどでは、本作について、「素の後藤まりこの音楽」という表現を用いているのを、よく見かける。
これ、どっちなのでしょうね。
捻くれずに、素直になったという意味では、それも理解できるかな、と考えるものの、ミドリの吐き出すようなパッションが、全部が全部、演出だったとも思えないのだよな。
むしろ、フラットな状態で聴いてみて、どっちがキャラを作っているかと言ったら、本作のほうが、あざとい気もするのです。

これ一枚で判断するのは難しい。
次の一手が、どちらに振れていくかで、本作の評価も、改めて確定するような。
ミドリ時代を知らないファンにしてみたら、そこまで衝撃的な作品でもないですしね。