リヴスコール / THE BACK HORN | 安眠妨害水族館

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リヴスコール(初回限定盤)(DVD付)/THE BACK HORN
¥3,500
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1. トロイメライ
2. シリウス
3. シンフォニア
4. グレイゾーン
5. いつものドアを
6. 風の詩
7. 星降る夜のビート
8. 超常現象
9. 反撃の世代
10. 自由
11. 世界中に花束を
12. ラピスラズリ
13. ミュージック

締めに持ってきたのは、皆様の想像どおりでしょうね。
THE BACK HORNの9枚目のアルバム。
初回盤は、ビデオクリップと、レコーディングドキュメントを収録したDVDが付属されています。

先行シングル「シリウス」や、チャリティーとして配信された「世界中に花束を」を含む13曲。
東日本大震災を経験した彼らが到達した音楽は、コンセプチュアルにメッセージを詰め込むのではなく、浮かんだアイディアをそのまま形にしていったような、等身大の楽曲たちでした。

等身大の音楽と言うと、捻りのないストレートなサウンドというイメージを持たれてしまうかもしれませんが、それは誤解。
狂気やどす黒さを孕んだダークなメロディと、キャッチーでわかりやすい構成を絶妙に融合させて、自らの音楽性の幅を広げてきた彼ら。
そんな彼らの等身大が、売れ線のポップナンバーばかりを並べることであるはずがなく、ここで言う等身大という言葉には、「ドキュメント性」という意味を大いに含んでいると考えていただきたい。
悩みや葛藤、その過程を経て、これしかないと腹を括った決意。
そういう心境の変化が、ときに難解に、ときに素直に、ひとつひとつのサウンドに込められているのです。

音楽ジャンルとしては新境地に踏み込んだ側面が強く、そういう意味では、理解するのに時間を要する、所謂スルメ系。
少しずつ耳から体に浸透していき、マニアックな部分がじわじわと癖になってくると、一気に抜け出せなくなってしまう。

特に、ギターとドラムのフレーズが、大幅に進化しましたね。
これまでは、ある程度お決まりのパターンがあって、その中の世界で、アイディアを重ねていた印象だったのですが、作曲者が、その他のパートのアレンジデモを作成するスタイルに切り替えた効果が出たのか、新しい視点からのアプローチが、格段に増した。
アンサンブルの可能性が広がったことで、もともと神がかっていたベースのフレーズも活きる。
変態的な手数を誇るベースラインは相変わらず歌いまくっていて、演奏だけを聴いていても、十分にお腹いっぱいになれるほどです。

そして、直接的にメッセージを代弁するボーカル。
Vo.山田さんの喉を切り裂かんばかりの熱情的な歌唱に、心を打たれる。
ダンサブルでファンクな「星降る夜のビート」では、ポップすぎるほどの新境地を見せているのですが、これはこれでTHE BACK HORNだと思えるのは、彼のボーカルのスタンスにブレがないことも、大きなファクターになっているのは、今更言うまでもありません。
攻撃的な「反撃の世代」から、壮大なバラード「世界中に花束を」まで、これまでの作品と比較しても、楽曲のバラエティは豊富なのですが、すべてに山田節を感じることができる。
継続性に裏付けられて、新たな試みが、ガチっとハマったといったところでしょうか。

個人的にお気に入りのナンバーは、「シンフォニア」と「ラピスラズリ」。
どちらも、本作においては異質さを感じる程にストレートさのある疾走ナンバーなのですが、だからこそのカタルシス。
序盤と、終盤。
必要なところで、複雑な想いをしっかり発散させてくれるというか、さすが、バランスも相応に考慮したとメンバーが語るだけのことはあります。

きっと、万人受けする作品ではない。
間違いなく、初心者向けのアルバムではないでしょうね。
だけど、名盤以外の言葉も見当たらない。
少し大人になった彼らの等身大の音楽。
機会があれば耳を傾けてみてください。