- パピルスに描かれるラーの天秤/ANUBIS
- ¥2,100
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1. ラーの天秤
2. ラムセス
3. SUBLIMINAL【Collectors version】
4. パピルス
5. 月ノ華
ex-LAREINEのベーシスト、EMIRUさんが、RUNという名義で在籍しているANUBIS。
本作は、1st Collectors Singleと仰々しく発表された、2007年の初音源。
この頃は、後に御主人様専用奇才楽団-Virgil-に加入し、現在ではソロで活動するHAKUさんなども在籍していました。
バンド名も含めて、コンセプトは、「古代エジプトを舞台にした、壮大な神話物語」とのこと。
なんだそれは。面白そうじゃないか。
ストーリーテリング的な作品と言えば、それこそLAREINEが得意とする分野だったこともあり、期待を膨らませながら購入しました。
聴いてみての、率直な感想は、コンセプトに沿ってストーリーを紡ぐには、KAMIJOさんの力なしでは厳しい。
音楽的にも、構成的にも、どの辺が古代エジプト? どういうストーリーが展開されているの? と、やりたいことに表現が追い付いていないのが正直なところでしょうか。
音楽に浸りながら、登場人物の喜怒哀楽まで伝わってきた、「フィエリテの海と共に消ゆ」と比べてしまってはいけませんね。
曲の導入や間奏等で、語りや会話のようなシーンが挿入されるので、そこでやっと、ストーリーシングルなのだな、と思い出される程度です。
楽曲から見た内容としては、SEの役割である「ラーの天秤」から、禍々しくも疾走感のある「ラムセス」に続く導入、デスヴォイス調のシャウトも多用した激しいナンバー「SUBLIMINAL」を挟み、極めて王道にメロディアスな展開で盛り上げる「パピルス」へ流れていく、まずまずの構成。
下手に、コンセプトでゴリ押しするよりも、正統派の新人バンドとして勝負したほうが、評価されたのではと思ってしまうくらい、安定した曲運びです。
確かに、スタンダードすぎる部分はあって、個性の上乗せとして、世界観を濃く・・・という気持ちはわからないでもないのだけれど、もうちょっとバンドが成熟してからでもよかったのではないかな。
ボーナストラックのような位置づけで収録されている「月ノ華」は、RIBBON、LAREINEと継続して演奏されている「極東の恋人」のバラードバージョンですね。
歌詞は、この時点でのボーカル、行来さんに書き換えられており、タイトルも変更されております。
神崎バージョン、KAMIJOバージョン、行来バージョンと、3通りの歌詞、アレンジがあるわけだけれど、徐々にインパクトが薄れてしまっているような・・・
バラードになっても名曲ではありますが、RIBBONでのスリリングなアレンジと、神崎さんの艶っぽい声との相性を知ってしまっていると、物足りなさが先立ちます。
実力に比べて、背負うものが大きすぎて、重圧に潰されてしまっているのは可哀相なところでもある。
EMIRUさん以外は、新人に近いようなメンバーばかりだったと記憶していますし、そういう意味では分相応のものには仕上げているのだけれど、ハードルが高すぎて、評価が辛くなってしまいますね。
もっとも、コンセプト云々は、自ら上げたハードルではあるので、自業自得の部分は否めないにしても。
改めて聴くと、そこまで悪いこともないのですよ、とフォローはしておきますよ。
このバンドは、2009年に一度解散をしているのですが、EMIRUさんを残してメンバーを再編し、現在、活動開始の準備期間に入っているとのこと。
ボーカルも変わっているので、音楽性等、どのように変化するのかは未知数ですが、今度こそ、完成された世界観を見せつけてほしいものです。