1PIKO / ピコ | 安眠妨害水族館

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1. Rebirth

2. 桜音

3. main dish

4. 証

5. 勿忘草

6. 恋しくて

7. ピコピコ☆レジェンドオブザナイト

8. 二息歩行

9. Rollin’ Merry Go Round

10. Story

11. 孤独の冠

12. Shooting Star

13. Sakurane -Ballad- (BONUS TRACK.)


ニコニコ動画の「歌ってみた」の歌い手さんが、バックに、V系アーティストを引き連れて、メジャーシーンに進出。

良くも悪くも、話題性のあったピコの1stアルバムです。


この人の武器は、なんといっても、「両声類」というジャンルを築いてしまった男女、両方の声質で歌うことができるという点。

単なるキーの高低だけでなく、声色という面でも歌い分けをしているため、まるで男女二人のボーカリストが混在しているよう。

インパクトは絶大で、ルックス的なアイドル性も含めて、ニコ動の歌い手が、商業的に成功できるかのプロトタイプのような存在とも言えるでしょう。


内容としては、キラキラ&ダンサブルで、近時のV系ファンに受け入れられる路線を念頭に置きつつ、ミクスチャー色は極力排除し、ライトユーザー向けに再構築したような楽曲が中心。

ボーカリストの作品として、歌っていて気持ちの良いナンバーばかりに統一されているという意味では、一貫されています。

歌メロじたいは、和を意識した歌謡曲テイストだったりするので、非常に聴きやすい。

バンド感のある「Rebirth」、ノスタルジックなシングル曲「桜音」と続き、ハイトーンながら安定した歌唱力を見せつけると、女声での「main dish」へ。

前半3曲で与える衝撃は、確かに、人気が出るわけだと納得せずにはいられない。


アルバムをざっと通して聴いたときの印象は、色眼鏡抜きで、なかなか良かった。

女声的な曲のインパクトに耳を奪われがちではあるけれど、バンドスタイルの楽曲も、DaizyStripperに近いメロディアスポップで、割と好き。

「ピコピコ☆レジェンドオブザナイト」のように、ニコ動ユーザーが飛びつきそうな楽曲や、「二息歩行」のような一人デュエットのようなナンバーも面白く、強みをはっきりと打ち出せている。

スキルがあれば、カラオケで歌いたいと思わせる曲目ばかりです。


一方で、課題としては、世間が「両声類」に慣れてしまった後のことについて、あまり考えられていないようなイメージ。

本人の問題ではないのかもしれませんが、使い捨て感がありありと・・・

コンセプトに沿って表現できるレベルのアーティストでもないし、女声が出せる=歌唱力があるというわけでもない。

ステージに立ったことのある人間にしかわからない部分ではあるのですが、カラオケで歌うのと、ステージで歌うのとでは、難易度がまったく違う。

ニコ動では、そこまでは判断できないよねぇ・・・というところで、今後伸び悩みそうな気がします。


そもそも、ニコ動でのファンって、中長期的にお金を出してCDを買い続けるお客様になりうるの?という疑念もありますし、ビジネスモデルとしてどう展開していくのかが鍵となるでしょうね。

せめて、男声に専念できるなら、ポテンシャルとしては非常に高い歌唱スキルはあると思うのですが、そこまで割り切った方向転換を、人気が下火になる前にできるか。

もしくは、もっとワクワクするチャレンジを、これ以上のペースで、どんどん積み重ねることができるか。


個人的には、楽曲のマニアック度合いを高めれば、長く聴き続けたいアーティストになるかなぁ。

飛び道具があるうえに、スキルも安定的。

そのうえ、楽曲は地味に難解なんだぜ!(シングル曲は聴きやすさ重視だけど!)

この方が、売れ線の曲だけを量産するよりも、固定ファンを作れそうじゃないですか?


言ってしまえば、全曲がシングルっぽい本作。

アルバム曲を、いかに作り込めるか。

その辺りが、勝負の分かれ目になりそうだと、勝手に予想してみます。