Re:plica / Dué le quartz | 安眠妨害水族館

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Re:plica/Dué le quartz
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1.Re:plica

2.Re:Sbiundead home de suck

3.Re:Shake speare


初期のPSカンパニーの看板バンド、デュールクウォーツ。

本作は、人気先行と言われていた彼らが、音楽的な評価を勝ち取ったシングルと言ってもいいのではないでしょうか。


やろうとしていることは、とても複雑で難解で、だけど、王道感のあるダーク路線。

この強い癖と、気持ちの良いベタさの絶妙なバランスに、華やかな見た目というファクターが加わって、人気が出たのは早かったバンドでした。


しかしながら、演奏面で、やや上滑りしている感が否めず、なかなか、玄人からの評価が伴わない時期が続いていたのも事実。

実際、Sakitoさんのボーカルは、声量もないわ、ピッチも甘いわで、かなり聴き苦しかったですね。

普通の歌でも厳しいくらいなのに、まして、展開が多く、不協和音も味とするデュールの楽曲を歌いこなせるわけがなく、自滅してしまっているな、という楽曲も目立ちます。


そんな中、正念場といった時期にリリースされたのが、この「Re:plica」。

これが衝撃でした。

Sakitoさんが自ら作曲も手がけているからか、歌が幾分安定している。

今、改めて聴いてみると、正直、それほどでもないのですが、当時にリアルタイムで聴いていたリスナーは、驚いたに違いありません。


メロディも、それまでのデュールにないくらいキャッチーさがあり、ストレートな構成。

ベタに盛り上がるサビにはワクワクするし、自然な展開で楽曲が進行していく聴きやすさと、意外性が同居しています。

そのサビの歌詞を、そのまま使うCメロの存在も面白い。

同期のサウンドも有効に使っていて、新境地ながら、とっておきのキラーチューンに仕上がったと言えるでしょう。


カップリングの「Re:Sbiundead home de suck」は、ベストにも収録されていない、本作でしか聴くことができないナンバー。

こちらは、雅さんが作詞・作曲を担当しているため、非常にこまっしゃくれた楽曲になっています。

デュールのイメージを損なわないダークさと難解さの融合が、曲調の割には長い楽曲に、飽きを与えない。

キメや、語り、終盤はシャウトまじりに畳み掛けるシーン等があり、目まぐるしく変化していく展開は独特。

言葉遊びも含めた遊び心も豊富で、現在の雅さんの音楽性とは違う、当時の雅さんらしさを感じることができます。


ラストに収録された「Re:Shake speare」は、メロディアスで淀んだ暗さを持つ、ミディアムバラード。

ゆるめのテンポでありながら、早口でぼそぼそと歌う手法で、サビに向かうにつれて徐々に盛り上がっていく。

歌い尻こそ、音程を外してしまっているのが残念ですが、聴いてるときの苦しさは軽減されています。


ダーク系のバラードは、退廃的だったり、壮大にしようとしていたりする傾向がありますが、この曲については、終始淡々としていて、新しさを感じました。

唐突感のあるラストシーンを迎えたと思いきや、オルゴールサウンドと語りが再びスタートしていくというギミックも凝っている。

女性コーラスなども、上手く組み込まれていて、雰囲気づくりの面からも成長がうかがえます。


3曲とも個性があり、スキル的なものを考えなければ、相応に楽しめる。

まだまだ難解ではあるけれど、彼らの作品の中でも、初心者に向いている一枚。

意地でも、わかりにくくするぞ、という力みが抜け、全体的にメロディを押し出すようになったところが好印象でした。


また、ドラムが安定していることも大きい。

バンドの心臓となるKAZUKIさんのリズムキープがしっかりしているため、雅さんもキカサさんも、自由なフレーズに挑めるのでしょう。

本当に、歌がもう少しだけ、上手ければね・・・

なんだかんだで、ツボな楽曲が多かっただけに。


<過去のDué le quartzに関するレビュー>

自殺願望