- CHILDREN/ROUAGE
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1 時間軸上のアリア
2 ever[blue]
3 エゴノカタマリカタマリノエゴ
4 「密室」は情熱の部屋
5 プラネタリウム
6 蟻とチョコレート
7 菜食主義者の肉食動物
8 冷たい太陽
9 望遠鏡
10 空蝉
ROUAGEのメジャー3rdアルバム。
結構、このバンドの作品では、「CHILDREN」が一番好きという人も多いようです。
もっとも、それも無理のない話。
メロディアスで疾走感のある、いわゆる王道曲から、壮大な世界観でじわじわ盛り上げる雰囲気モノ、実はリミックスが得意な彼らならではのデジロックテイストのナンバーまで、バラエティが豊富。
しかも、1曲1曲のクオリティが非常に高く、とっつきやすく、深みもある、バランスのとれた納得の一枚なのです。
本作は、冷たく暗く、淡々とした初期の音楽性から、あたたかく淡く、叙情的な後期の音楽性に移っていく転換期というべき時期にリリースされた作品で、光が見えるような楽曲も増え始めました。
これまでは、無機質でモノトーンの印象を受ける曲が多かったのですが、『「密室」は情熱の部屋』や、「冷たい太陽」など、鮮やかな色彩感覚を持つ楽曲が強い個性を放っており、楔として味わいを広げる役割を果たしている。
進化したな、ということがはっきりとわかります。
いきなり、バラードの「時間軸上のアリア」からはじまる構成にもやられました。
出だしから壮大に迫り、続く「ever[blue]」で追い詰められたような緊迫感を演出。
溜まっていたものを吐き出すような疾走感、勢いに、導入部分での印象が抜群です。
同じフレーズを繰り返すサビの曲が多いあたりに、時代を感じはするものの、ハイトーンなボーカルが主流のシーンで、KAZUSHIさんの中~低音域を活かしたメロディの選び方をしているため、未だに新鮮な部分もあるでしょうか。
楽器隊が、引き立て役に徹底しているのも、サウンドバランス的には良し。
派手なフレーズはないものの、耳に残るリフが多く、余韻が感じられる。
そして、特筆すべきは「空蝉」。
ラストにして、この世界観を締めくくる、はらはらと儚げなナンバー。
芯のある壮大さで幕を開け、この残り香を惜しむような切なく、淡く、ノスタルジックな演奏は、独特の空気を纏っています。
パンを振って、左右から囁くように繰り返されるウィスパーボイスや、淡々と紡がれる歌詞世界など、叙情的なROUAGEのスタートとでも言うべき、作り込まれた工夫が目白押し。
まるで、思春期時代の夏の思い出を、生ぬるい風、アスファルトが焼ける匂い、どことなく漂う喪失感、そういったものを丸ごと真空パックに閉じ込めたような感覚さえある。
これは、名残惜しさに、何度も1曲目からリピートしてしまいますね。
セールスだけで、90年代のV系を語ってはいけないのだな、と思い知らされる名盤です。
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