CRUSH!-90’s V-Rock best hit cover songs- / V.A. | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

CRUSH!-90’s V-Rock best hit cover songs-/(V.A.)
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最近のバンギャさんも、90年代が忘れられないオバンギャさんも、こぞって注目している期待の企画モノオムニバス、「CRUSH!」。

現代のV系が、90年代V系ヒット曲をカバーするという試み。

これ、世代的にどの曲もソラで歌える曲ばかりだし、シリーズ化してくれないかなぁ。

ピエロ、ファナ、ROUAGEにLaputa、黒夢もラルクも、まだまだやってほしいバンドはあるでしょう。

1曲1曲の善し悪しは別として、楽しいアルバムでした。



1. ピンク スパイダー / heidi.

原曲:hide with Spread Beaver


基本的には、ストレートにコピーをしたってところですけれど、ドラムの渇いた感じにheidi.っぽさを感じます。

これ、hideさんのトリビュートでは、SIAM SHADEがカバーしてましたが、そちらもストレートだったし、オリジナルのインパクトが大きすぎると、いじりにくくなるのかもしれませんね。

歌は、オリジナルよりも上手いけれど、SIAM SHADEのカバーも含めて、オリジナルの持つケバケバしさは超えられてないでしょうか。

出来そのものは悪くないです。



2. 街 / ドレミ團

原曲:SOPHIA


出だしに笑ってしまった。モノマネ入ってますよ(笑)

でも、完成度は高いです。

本当に好きなんだなぁ、というのが伝わってくる。

ドレミ團に合うのか?と思っていたけれど、そこまで捻ってはきませんでしたね。

もともとの曲の良さもあり、とても爽やかで聴き心地が良い仕上がりです。



3. Melty Love / BugLug

原曲:SHAZNA


パンクアレンジにリメイク。

歌メロも少し変えていたり、後半の疾走部分を作っていたりと、工夫しているし、上手くハマっているしで、これぞカバーの醍醐味。

IZAMさんよりも上手いですね。

パンク調のアレンジって、そんなに難しいわけじゃないだろうけど、原曲のリフをそのまま持ってきている部分もあり、その辺の塩梅が絶妙でした。



4. 1/3の純情な感情 / NoGoD

原曲:SIAM SHADE


原曲もキーは高めなのに、更にキーを上げて歌うのか。

原曲もテクニックバリバリなのに、更にそんな難解なフレーズを織り込んでくるのか。

オリジナルのキャッチーさ、ポップさといった長所をまったく壊さず、らしさも存分に堪能できる。

さすが、クオリティは高いですね。

個人的には、オリジナルのキーに慣れ過ぎているためか、ハモりのパートを歌っているように聴こえてしまう部分あり(笑)



5. 月下の夜想曲 / D

原曲:MALICE MIZER


この曲って、普通のバンドが普通にカバーしても、ネタっぽくなると思うんですが、これをここまでやりきれるのは、さすが浅葱といったところでしょうか。

メタル要素が増していて、音楽的にはとても硬派になりました。

それでいて、雰囲気は壊さず、耽美でレトロな世界観を表現。

間奏パートが追加されていたり、個性を活かす工夫もされていて、良いと思います。

ネタ曲を真面目にできる、Dだからこその完成度。



6. STORM / 少女-ロリヰタ-23区

原曲:LUNA SEA


割り切ってアレンジするのか、原曲どおり、完全コピーの美学を見出すのか、どっちつかずになってしまっているなぁ。

音飛び風のイントロにはワクワクするんだけれど、歌が入ってくると、至って普通。

モノマネしてしまいがちなRYUICHIさんのボーカルに引きずられていないのは好印象ですが、個性がないのが評価が難しいところです。

演奏も歌も、十分なレベルなだけにね。



7. 紅 / 摩天楼オペラ

原曲:X


Toshiさんと比べてしまうと、弱い部分はあるのかもしれませんが、ここまで歌も演奏もやり遂げられるバンドに成長していたんですね、摩天楼オペラ。

大御所中の大御所の代表曲を、きちんと自分たちの耽美メタルのフィールドに持ちこめているのは高ポイント。

シンフォニックで荘厳な仕上がりになっています。

彼らって、Xをリアルタイムで世代ではないですよね。

だからこそ、堂々と既成概念をぶっ壊せたっていう怖いもの知らずさが、功を奏したってところでしょうか。



8. With-you / DaizyStripper

原曲:La'cryma Christi


夕霧さんも、大概両声類ですよね。

出だしは、女性ボーカルそのものでびっくりしました。

オリジナルが好きすぎるので、評価が難しいところですが、TAKAさんのハイトーンボイスもしっかり再現できています。

むしろ、夕霧さんのほうが癖は少ないので、一般受けもしやすくなったような印象。

ただし、バカテク軍団だった演奏隊を出し抜くことはできず、ちょっと粗さが目立ってしまったり、同期に逃げてしまったりというところがマイナスでしょうか。



9. Winter,again / 12012

原曲:GLAY


12012がGLAYって、あまりピンと来なかったのですが、完全コピー的な手法でのカバー。

こういうのって、無個性だなんだと議論が起こるところとは思うのだけれど、完璧にやりきるっていうのも、面白くはありますよね。

歌まで似せようとする必要はなかった気がしますが(笑)

大幅にいじってくるバンドあり、完コピを目指すバンドありっていう構成も、バランスとしてはアリなんじゃないでしょうか。

まぁ、そんな感じなので、アレンジ面については語ることは少ないです。でも、結構好きです。



10. ロマンス / アンド

原曲:PENICILLIN


一番、大幅に原曲にケンカを売ってきたのがこれ。

激しく高揚感のあるペニシリンの代表曲を、サビはダンサブルなキラキラオサレ風に、Aメロはラウドなゴリゴリ風にリアレンジ。

サビでキーを下げているのは、ちょっと逃げたな、と思いますけれど、ダンサブルアレンジの部分は、結構アリだと思いますよ。

改めて、原曲のメロディの良さを感じることができます。

ただ、Aメロのメリハリのない重いだけの展開は、ちょっとなぁ・・・

爽快感が、まったくなくなっています。

頑張りすぎて、原曲の良さを見失ってしまった印象。



11. S.O.S ロマンティック / Mix Speaker's,Inc

原曲:CASCADE


さすが、ベテランといったところですね。

原曲の摩訶不思議なフレーズ、キワモノポップな世界観を残しつつ、自らのメルヘンホラーの彩色に変化させている。

彼らのオリジナルといっても過言ではないほどに仕上げてきました。

ツインボーカルが全然活かせていないのは、仕方がないでしょうか。

毒々しく、可愛げもある。

大幅にいじっても、こちらは上手くやりましたね。



12. ENDLESS LOVE / LOST ASH

原曲:D-SHADE


最近、事務所のプッシュが激しいロストアッシュ。

M-1でいうところの、麒麟枠といったところですかね。

新人バンドながら、メジャーデビューが近いと言われているだけあって、なかなかレベルが高いです。

アレンジは原曲に忠実。

疾走感、高揚感、「やりきーれなーい!」を恥ずかしがらずに歌うところなど、原曲の良さはしっかり再現しつつ、若いバンドらしく、最近の流行りであるキラキラ的な雰囲気も混ぜ込んでいて、単純に格好良い。

これで彼らを知る人も結構いると思いますが、良い宣伝にもなったのではないでしょうか。



13. Schweinの椅子 / MERRY

原曲:Dir en grey


さすがメリー。こんな暴れ曲まで、きちんとメリーの音に昇華させています。

絶叫シャウトや、艶っぽい歌モノパートなど、しっかりガラさん節を聴かせてくれるし、演奏面にもテロテロウネウネのフレーズが多用されていて、初期メリーのエログロ的な雰囲気が出ている。

これは、格好良いですね。

突然終わるラストはそのままで、潔くて良し。

ただ、原曲を聴き込み過ぎていて、流れで「ゆらめき」に繋がらないのに違和感があるのは僕だけではないはず。



14. JUPITER / DuelJewel

原曲:BUCK-TICK


渋いバンドが、渋い曲を。勇気がある選曲だなぁ。

90年代ヴィジュアルブームって、90年代前半と、後半を一緒にしてしまうと違和感があるというか、XとBUCK-TICKは、もうひとつ前の世代かとも思うのですが、ミディアムテンポの曲が入ることで、アクセントにはなっているかと。

どのバンドも、アップテンポの王道選曲なだけに、こういう落ち着きは大事。

きちんと原曲の良さを消さずに、現代に蘇らせていると思います。



15. 夢より素敵な / DOGinTheパラレルワールドオーケストラ

原曲:Raphael


カバーするアーティストも、カバーされるアーティストも、このメンツでのトリとしては、少々小粒な気がしてしまうのですが。

収録曲のオリジナルの総売り上げが800万枚ってことですが、これ、インディーズ時代のシングルだし、そんなに売上に貢献してないでしょう(笑)

歌も演奏も悪くはないけれど、原曲のボーカルが上手すぎるので、ちょっと物足りなく感じてしまう。

決してダメダメではないので惜しいのですが、アレンジもそこまで凝っているわけでもないし、もうちょっと頑張れといったところ。



こういう企画の難しいところは、原曲そのままでも無個性って言われるし、原曲の流れをぶった切っても苦情が来るっていうところだと思うけど、どのバンドも、その辺をわかってやっているというか、自分がまさに影響を受けたアーティストをカバーしているだけあって、何が聴きどころかを押さえているな、と。

だからこそ、モノマネになっちゃっている人もいるけれど、その辺はご愛敬でしょうか。

近年流行っている、往年のスタンダードをカバーする企画よりも、気持ちがこもっていて、好感が持てます。


商売ではあるので、今回はヒット曲ばかりでしたが、本当に影響を受けたバンドのカバーオムニなんてのも聴いてみたいものです。

って、昔、サードステージが企画していた「回顧録」シリーズが、案外、それにあたるのか・・・?

時間があったら、安眠妨害水族館的、「CRUSH!2」予想なんてやってみようかしら。

需要がないっていうのは聴こえないフリ。