ONE / 葵 from 彩冷える | 安眠妨害水族館

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ONE/葵 from 彩冷える
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1. Liar

2. 誘惑

3. Surrender Love

4. Guilty

5. 想い出になる前に

6. MI DA RA

7. secret whisper

8. Everlasting Love

9. あなたへ

10. 向日葵


-BONUS TRACK-

11. BRAVE DREAMER

12. ONE


彩冷えるのボーカリスト、葵さんの、1stソロアルバム。

ご存じのとおり、彩冷えるが空中分解したことにより、「葵 from 彩冷える」という名義で次の作品がリリースされるのかは微妙なところですが、ソロ活動の一区切りとして、これまでのシングルを含む全10曲を収録しています。

例のごとく、3種売りですが、通常盤は、ボーナストラックが2曲入るということで、僕はこちらを購入しました。


メジャーデビュー後の爽やかポップ路線の彩冷えるには、正直なところ、戸惑いがあったので、本作がどういう風に仕上がるのかは、期待半分、不安半分でした。

ところが、蓋を開けてみると、レトロポップ満載で、なかなか良いではないですか。

バンドという縛りが解けて、のびのびと昭和のアイドルさながらのダンスポップを歌い上げています。

メンバーチェンジ後の彩冷えるで見せた、ダンサブルな路線や、メジャー期での爽やかポップス路線を、程よい塩梅で残しつつ、どちらとも違う、ある種、振り切ったような音楽に挑戦しているのが印象的。


重い曲、激しい曲、難解な曲を期待しているコアな層には、なかなかとっつきにくい系統かもしれませんが、最近のキラキラしたポップロックバンドに、レトロ感を加えたような楽曲たちは、葵さんの声質ともマッチしていて、妖しく、艶やかにアルバムを構成していきます。

固定のバンドメンバーがいない、ソロだからこその遊び心、大胆なアレンジも可能になっていて、メジャーだからこそできた、良質のヴィジュアルポップス。

歌謡曲的でキャッチーなフレーズは、バンド時代からの強みでもありましたし、そういったところを活かしつつ、新境地に踏み込んだという意味では、確かにソロ活動を行う必要性もあったのかなぁ、と。

今回の脱退騒動の有無に関わらず、これはこれでアリですね。親しみやすい。


課題としては、レトロ・アイドル路線な曲調に合わせてなのかもしれませんが、歌詞が安っぽい気がしてしまう。

少し間違えると、一気にネタっぽくなってしまうレベルの英単語が並んでいたり、ありがちなラブソングだったりと、深みは感じられませんでした。

歌詞の面でも、グッと印象に残るフレーズがあれば、もっと心を掴まれたのに。

体で音を感じる分には、もってこいの作品なだけに、もったいないというか、残念というか。


AYABIEが、原点回帰的なアルバムを発表する一方での、葵さんのアルバムリリース。

バンドに拘ってやりたいことを貫いたAYABIEと、バンドに拘らない自由なスタイルで、やれることの可能性を広げようとした葵さん、お互いが、今できる最大限の作品をドロップしたことによって、やっぱり方向性が変わってきていたのだな、というのが再認識できるのも、皮肉なものです。

ただ、どちらも本当に良い作品を作り出してくれたので、結果としてはギスギス続けるよりも良かったのかもしれませんね。

葵さんの底力を見せつけられたような、バラエティに富んだ一枚です。