1. たとえばxxx
2. 白昼の足跡
3. 序章
4. ある春の晴れた日に・・・
cali≠gariや、XA-VATのボーカリストとして活躍している石井秀仁さんが在籍していた、SAKRUN。
このCDでは、バンド名がさくらん表記になっています。
今や、秀仁さんの音楽性といえば、ニューウェーブ、エレクトロをベースとした80年代ポップスのイメージが強いかと思うのですが、この頃は白系ど真ん中。
メジャーデビュー直後のラルクのような楽曲を、秀仁さんが歌っていると思うと面白い。
さくらんとラルクは、ほぼ同時期に活動していたので、どちらかが影響を受けたというよりは、その時代のスタンダードだったということでしょうね。
表題曲でもある「たとえばxxx」のAメロ部分では、最近の秀仁さんっぽい歌い回しも聴けるので、振り返って聴くと不思議な感覚。
この頃から、歌唱力は安定していています。
クリーンなトーンのギターの音色が幻想的に響き、そこに声を張るわけでなく、だけど存在感のあるボーカルが重なって、なんとも言えない繊細さが表現されている。
最近の、とにかく重厚な音づくりに慣れてしまった今、こういう空間を意識した音の使い方は、新鮮さすら感じられます。
2曲目、「白昼の足跡」も、1曲目の流れを継ぐ、ミドルテンポで爽やかさがある楽曲。
ファルセットの使い方が、異国的で独特な雰囲気を醸し出している。
決して盛り上がる曲ではありませんが、もっともメロディが美しいナンバーです。
インスト曲である「序章」をアクセントに挟んで、ラストは「ある春の晴れた日に…」。
こちらは、ボーカルチェンジ前の楽曲を、秀仁さんが歌詞を書きなおしてリメイクしたものなのだとか。
日曜日の昼下がりに、お洒落なカフェで流れていそう。
これまでにあったラルクっぽさは少し薄れて、「白昼の足跡」の世界観を、更につきつめたような印象で、完全なる雰囲気モノに仕上げています。
秀仁さん時代の音源は、オムニバス作品を除けば、この1枚だけ。
全体的に大人しめなラインナップなので、インパクトは薄かったのが正直なところです。
しかしながら、最近では、この手の白系バンドが絶滅危惧種になってしまっていることもあり、改めてクオリティの高さに聞き惚れている2010年。
馴染む、馴染む。
長く聴ける作品なのだな、と熟成させて価値に気付く1枚でした。