...Air / MIRAGE | 安眠妨害水族館

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...Air/MIRAGE
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1. ...Air

2. DeathtopiA


凛を結成し、シーンに舞い戻ってきたKISAKIさんが、La:Sadie's解散後に組んだバンド、MIRAGE。

KISAKIさんのバンド変遷をたどれば、La:Sadie's→MIRAGE→Syndrome→Phantasmagoria→凛-the end of corruption world-と、どれをとってもコテコテ系の代表として、その時代に君臨しているから凄いです。


本作は、結果的にMIRAGEのラストシングルとなった作品。

上手いわけではないのだけれど、なぜか憎めないボーカルを拾ってくるKISAKIさんですが、このバンドに在籍したボーカリストは2人。

初代はTOMOさん、二代目はAKIRAさん。

どちらかと言えば音程重視で無表情的だったTOMOさんに比べて、感情的な歌唱でメロディアスな楽曲に強みを見せていたAKIRAさんがボーカルを執った本作は、これまでのダークで激しいイメージから、少し幻想的な世界観が足されています。

Syndrome時代の、龍夜さんから浅葱さんへのボーカルチェンジのときの変化と近いものがあるかもしれません。


活動期間としては、1年弱と短かった2期のMIRAGE。

1期時代の代表曲、「Wind Whisper」などのインパクトを超えることができず、苦労していた部分もあったのでしょう。

実際、歌詞を変えて、「Wind Whisper」は演奏され続けていましたし。

しかし、この「...Air」ができたことによって、少し報われたかな、と個人的には思っています。

2期時代の代表曲は、間違いなく、この「...Air」であると。


もちろん他にも、ハードな曲や、ダークな曲での名曲はありますけれど、低めに響くヴォーカリゼーションを活かして、今までになかったような雰囲気のメロディアスナンバーに仕上がっている。

AKIRAさんの声質も相まって、LUNA SEAとの親和性を感じさせる幻想的に広がっていく歌モノになりました。

振り返って聴くと、Phantasmagoriaや、凛に繋がる幻想的なサウンドの原点とも言えるシンセの使い方も伺えるから面白いですね。


カップリングの「DeathtopiA」は、従来のMIRAGEの王道路線とでも言いましょうか。

ハードで、ダーク、サビになると、メロディアスという、さすがMatinaレーベルの元祖といったコテコテっぷり。

良くも悪くも、伝統的なシャウトに、ツタツタドラムというダーク系のスタンダード。

歌メロも、一音ずつ声の伸ばす、速いのだけれどメロディアスに聴こえるアプローチを採用しています。

今となっては手垢がつきすぎた感はありますが、あえてそこに手を出すバンドもいなくなってしまったほどの王道展開っぷりは、かえって新鮮。

90年代コテ系好きなら、この手のダークチューンは大好物なはず。

語りからはじまる、ドラマ性を持たせるようなこってり具合も、忘れてはいけない重要ファクターでした。


2曲とも6分超の大作で、シングルながら充実感はたっぷり。

しかしながら、価格が1,890円と、コストパフォーマンスの悪さが、当時は批判の対象でした。

当然ながら、DVDなんて付いているはずもなく、それでミニアルバム並の価格。

まぁ、現在であれば、中古で投げ売りされているため、ワンコイン以下で手に入れることも容易ですけれど、解散後に発売されたベストアルバムには、2曲とも含まれており、まとめて振り返るのであれば、網羅性の高いこちらをおススメいたします。
通常のシングル価格であれば、この内容、完成度で批判されることはなかったのではなかったのでしょうね・・・