desert/GULLET
1.amnesia
2.persecution complex
3.cult
9GOATS BLACK OUTの漾さん、lynch.の玲央さん、ex-the studsのゆきのさん等が在籍していたGULLET。
本当に、名古屋系バンドは、内輪でのメンバーシャッフルを繰り返すので、どのバンドをレビューしたか把握しにくいなぁ。
本作は、GULLETの最初の音源として、ライブ会場と通販で限定販売されたマキシシングル。
「amnesia」は、このシングルでしか聴くことができないため、比較的貴重な音源かと思われます。
その「amnesia」は、ゆきの作曲のミディアムバラード。
重く、厚い演奏に、暗く淡々としたメロディが重なる名古屋系の王道といった構成なのですが、漾さんの紡ぐ繊細な言葉の流れがとても美しく、聴きにくさが緩和されています。
むしろ、何度も聴いて、味わいが深まってくるほどに、サビでの感情の爆発がたまらなく聴こえてくるから不思議。これぞスルメ系の名バラード。
鋭く細い歌声なのに、まったく危うさを感じない、安定したボーカルも、このバンドの強みでした。
全体的な雰囲気としては、しっかりと9GOATS BLACK OUTに受け継がれているかと。
2曲目は、後に「acid me」というシングルで再録される「persecution complex」。
メロディアスさはそのままに、演奏にハードさを増した勢いのある曲。
全体的にマニアックさを漂わせる独特な雰囲気を持っていますが、歌メロは、名古屋系らしからぬキャッチーさを持ったバンドだったなと、ここ2曲の流れで改めて感じます。
もちろん、だからといって世界観が薄まるわけでも、ありがちな音楽になるわけでもない。
この濃密な世界観を味わうための、入口だけが広がったとでも言うべきでしょうか。
最後の「cult」も、「hidden baby」という会場限定シングルで再録されますが、これがオリジナル版。
へビィでハード。サビでのシャウトの掛け合いが格好良い。
世界観よりも、ハードさ、スリリングな展開を重視したようなナンバーです。
マニアック、澱んだ世界観、という名古屋系の定義が、ラウドで重い、硬派なバンドというイメージに切り替わっていく中で、その過渡期にあるような曲構成。
シャウト部分と、メロディ部分のメリハリが素晴らしく、この辺は漾さんのスキル勝ち。
さすがだとしか言いようがありません。
残念ながら、1年弱の活動期間の短いバンドでしたが、しっかりと時代に爪痕を残した、インパクトのあるバンドでした。
世に出した音源のほとんどが、会場限定、通販限定だったこともあり、GULLETの音源＝レア音源というイメージもあるくらい。
メンツがメンツなので、世界観を作り出すことに関しては一流でしたが、その世界観を壊していこうという真逆の試みも同時にしていくような、新しいスタイルの構築をしようとしていたのが、今となっては面白いですね。
当時は、名古屋系は世界観こそ全て、みたいな風潮もあり、賛否両論ではあったけれども。
そんなGULLETが、まず提示してきた音楽。
クオリティが非常に高く、曲のタイプも被っていないため、導入としては大正解。
今後の活動への期待感を大きくしたCDでした。
フルアルバムが聴いてみたかったですね。