心臓。 / 愛狂います。 | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

心臓。[初回限定盤]/愛狂います。
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1. ~おしまい~
2. 心臓
3. 豚の王様「ニトログリセリン」
4. 文化≠包丁
5. 【d2b2】
6. …うしろ。
7. 骸骨のうた
8. メルトダウン
9. オカルト・キラー
10. 首輪


「愛狂います。」と書いて、「アイクル」と読むデコラ系の成長株。

全曲書き下ろしの1stフルアルバムです。


ゴテゴテの衣装に、ポップでキラキラした曲。

デコラ、お洒落系が好きな人にはたまらないバンドかと思いますが、メルヘンチックながら、少し難解な歌詞に見られる不思議な世界観を持っているため、一筋縄ではいかない中毒性を持っている。

曲の系統だけで言えば、初期の彩冷える→少女~ロリヰタ~23区→愛狂います。といった系譜になりますかね。

あの辺のバンドの独特な不思議ポップの世界観を、よりお洒落系方面に強めたようなイメージです。


このアルバムも、シングル等からの使い回しを一切せず、全曲新曲で発売するあたり、勇気というか、度胸というか、潔さを感じます。

他の音源が、結構小出しにリリースされている印象なだけに、このアルバムは新規ファンの入門書としては丁度いいアイテムになるんじゃないでしょうか。

実際、僕もこのアルバムから、アイクルを聴きだしましたので。


導入のSEから「~おしまい~」なんてタイトルをつけるあたり、捻くれていて良し。

続く、表題曲「心臓」に、うまく繋がっています。

全曲書き下ろしのアルバムの怖さは、シングル曲がない分、キラーチューン不足でインパクトが薄れてしまうことなのですが、この「心臓」がきちんとその役目を果たしている。

サビはメロディアスで覚えやすいし、イントロや間奏のシンセ満載のキラキラフレーズは期待感を煽ります。


世界観が凝っている分、メロディそのものはキャッチーなものに仕上げているギャップが、こういうバンドの強み、受け入れやすさ、深みにはまったら抜け出せない中毒性に繋がっているのかな。

激しい曲も、マニアックな曲もありつつ、どの曲にもキャッチーさの防波堤が敷き詰められていて、きちんと耳に残るような構成になっているのがさすがなところ。

ボーカルも、こういう路線の曲があう、クリアな歌い方をするので、余計な聴きにくさもないですね。


1回目聴いた印象では、ヴィジュアル系の流行りを取り入れながら、ずいぶんとポップに仕上げたな、といったところなのですが、2回目、3回目、と聴いていくうちに、実はポップな歌メロの合間に、ダークなギターのフレーズが織り込まれていたり、実はスケールアウトしているのに、ここまで違和感なくフレーズが溶け込むんだ!と気付かされる。

新進気鋭のバンドながら、ところどころマニア心をくすぐるアレンジが施されていて、なかなか面白いです。


「文化≠包丁」なんて、お洒落系楽曲の王道なのですが、煽り部分として用いていたフレーズが、次の展開ではアレンジが変わっていて、とても大人びたこじゃれた感じに聞こえてくる。

まるで、同じ曲の同じフレーズとは思えないくらい、色が変わるのです。

上モノの使いかたが上手。

要所要所で効いています。


見た目も派手だし、曲もベースはお洒落系なので、苦手な人は苦手かもしれませんが、先ほど記述したように、初期のアヤビエやロリヰタが好きな人は、とりあえず一度聴いてみては。

音楽性がそのまま重なるわけではありませんが、共通する部分は見いだせるはずですので。


課題があるとすれば、せっかく音や曲構成がコロコロ変わって面白いので、ボーカルにもそれに対応しきれるくらいの表現力が欲しいかな。

やや一辺倒な歌い方をするイメージ。

デジタルな路線に行くのならこれでも十分かと思いますが、人間味のある曲も取り入れていく中で、必要なスキルかと。


総合的には期待できるバンド。

ネタ切れになって、普通のバンドになってしまわないことを願います。