- sug life/baroque
- ¥3,150
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1. - (intro)
2. Style
3. ガリロン
4. 歪
5. Rump
6. ヒトのイロ
7. Exit
8. Ila.
9. Bug
10. Nutty A Hermit
11. Sound Of Respire
12. キャラメルドロップス
13. グラフィックノイズ
14. - (outro)
ヴィジュアル系を聴く年齢層って、若い人が多いじゃないですか。
別にそれが良いとか悪いとかを言うつもりはなく、事実として。
でも、ヴィジュアル系の中にも、大人になったら良さがわかるバンドってあると思うのです。
たとえば、歌詞の面からいうと、SOPHIAとかね。
サラリーマンになってから「ビューティフル」を聴くと、"全然楽しい曲じゃないじゃない!"と衝撃を受けたりするわけですよ。
では、サウンドの面からも例を出そうとすると、僕はbaroqueが思い浮かびます。
バロックは、お洒落系というサブジャンルを作った立役者。
コテ路線の曲に、シャッフルを多用したジャジーなアレンジを取り入れたり、また、歌い方もそれまでの世界観を意識した歌い方ではなく、おしゃべりをするようにラフに吐き捨てる歌唱法にしてみたりと、タブーを踏み越えるアプローチが斬新で、多くのバンドが影響を受けた結果、一気にブームは広がって行きました。
しかし、自分たちが作ったブームをあっさり捨て、ミクスチャー路線に舵を切っていった彼ら。
当時の僕は、この変化についていけなかった。
初期バロックは良かったのに・・・
バロックと、baroqueは別物・・・
リアルタイムで当時を過ごした記憶としては、そんな声も多かった気がします。
そんな中、メジャーに進出した彼らでしたが、全盛期の勢いは維持できず。
身から出たサビ的なトラブルもあり、いくつかのシングルと、たった1枚のオリジナル・アルバムを残して解散してしまいます。
その唯一のフルアルバムが、この「sug life」。
当時はね、"あぁ、これはbaroqueだね。"と、そこまで大きな感動はなかったのですよ。
唯一入っている初期のレア曲「キャラメルドロップス」のために買ったくらいの感覚でした。
ところが、今、聴いてみると、全然印象が違う。
あの若さで、ここまでの音楽性に達していたのかと驚くのです。
音楽的には、シューゲイザーに属するのでしょうか。
ギターがノイズミュージック的にごちゃごちゃ入ってきて、ボーカルは雰囲気を出すだけ。
当然、声なんて張らないよ、といったスタイルです。
リズム体は、淡々とタイトなリズムを刻み、シンセや効果音が音の隙間を埋めていく。
音は厚くないのに、隙間がないというこの感じ。
音に漂う、音に酔う、音に飲み込まれる。
Aメロがあって、キメがあって、サビで盛り上がって、泣きのギター・・・こんな音楽にばかり触れてた当時の僕が理解できなかったのは無理もなくて、だけど、聴き返してみると、本当にこのアルバムは凄い。
Gt.圭さんのソロワークスが、この延長線上にあることを踏まえると、彼の色が濃く出ての結果だと思うのですけれど、あのとき、彼は未成年。
どれだけ早熟なんだよ、と。
僕らのどれだけ先を行っているんだよ、と。
颯爽と登場し、シーンの中の多くのバンド、あるいはファンを巻き込んだうえ、そのまま置いてきぼりにしてきた彼らの音楽は、6年経って答え合わせをしてみると、その先見性に驚かされるばかりなのです。
個人的には、本格的なシューゲイザーより、ヴィジュアル系バンドとしてのギリギリのラインで奏でるシューゲイザーがたまらない。
むしろ、「キャラメルドロップス」が浮いてるのでは、と不要論を唱えたくなるほどの手のひら返し。
そんな音楽性だから、キラーチューンらしいキラーチューンはないのだけれど(強いて言うなら、やっぱりシングル曲は聴きやすく出来ているけれど)、雰囲気モノとしては最高峰のものを作り上げていたのですよね。
そんなわけで、中高生が多いであろうV系リスナーには、まったくピンとこないであろうディスクレビューでした。
安眠妨害水族館の読者は、同世代のアラサー層が多いと信じて。