With... / wyse | 安眠妨害水族館

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With... / wyse
安眠妨害水族館~別館~-WYSE

 

1. Speed

2. Virus「赤と白と黒の定説」

3. am0:00の警笛の中で

4. Miss txxx

5. blue on blue

6. With...

20. RESET

 

関西ソフトヴィジュアル系を代表するバンド、wyse。

本作は、2000年にリリースされた1stミニアルバムです。

 

ex-LoopのVo.月森とGt.MORI、ex-Le viewのGt.HIROとBa.TAKUMAを中心に結成された彼ら。

ドラムは流動的でしたが、この頃は、現VirgilのロアがKENJI名義で在籍していました。

彼らの特徴は、TAKUMAさんが2ndヴォーカリストとして君臨する、実質的なツインボーカル編成。
そして、多感な時期の精神状態をダイレクトに切り取ったような歌詞のリアリティにあるでしょう。

作詞作曲でのイニシアティブをとることも多かったTAKUMAさんは、結成当初、まだ10代。

だからこそ書ける、痛み、悩み、不器用さ。

そういった部分に、多くのリスナーが共鳴していたように思います。

 

そんなwyseの初CDが、本作。

SOPHIAのKey.都さんがプロデュースを担当していることもあり、どことなくSOPHIAっぽさも感じられるかもしれませんね。

 

1曲目は、アップテンポなロックチューン。

疾走感のある硬派な楽曲に仕上がっています。

上モノのキーボードが良いアクセントになっており、男臭くなりすぎない絶妙なバランスを実現していました。

続く、『Virus「赤と白と黒の定説」』は、少し大人びた雰囲気が出ていて、彼らの新しい側面を見せたナンバー。

一方で、サビでのツインボーカルの掛け合いは彼ららしく、上手くアルバムに馴染んでいます。

ベースのサウンドが目立つのも、実に彼ららしいな、と。

 

そして、3曲目「am0:00の警笛の中で」くらいから、こういうwyseを待っていた!というセツナロック中心の構成になってきます。

当時の彼らに求められていたのは、透明感のあるアレンジに、切ないボーカルラインが乗る、まさにこんな音楽性。

そういう意味では、一番デモテープからの流れを受け継いでいるのが、この曲だったと言えるでしょうか。

 

アクセント的に激しさを押し出した「Miss txxx」を挟んで、ラスト2曲は、系統の違った泣かせる名曲たち。

「blue on blue」は、曲名にSOPHIAへのリスペクトが見受けられますね。

wyseらしい、疾走感を保ちつつ、淡々と進行する、雰囲気モノの楽曲。

良い意味で起伏がなく、余韻が残る。

キーボードとツインボーカルの絡みがたまらないのですが、ラストに行くにつれて、そこに泣きのギターまで加わってくるから、切なさが倍増ですよ。

 

最後に待ち構えているのは、タイトル曲の「With...」。

恋愛をテーマにしているかのように見せて、実は母親に宛てて書かれたミディアムバラード。

そういう視点で歌詞を聴いてみると、なるほど、とてもしっくりきます。

「blue on blue」が淡々と進んでいったのと対照的に、表現の起伏が激しいのもポイントでしょう。

Aメロの抑えた感じから、Bメロ~サビにかけての感情の爆発。

1番と2番でも感情のこもり方が絶妙に違っていたりして、後半に行くにつれてどんどん盛り上がるように工夫されている。

本当にTAKUMAさんは早熟の天才だったんだな、と思わずにはいられません。

 

なお、20トラック目には、ボーナストラックとして、メンバー紹介曲「RESET」が収録されています。

限定デモテープの再録となるポップでアッパーなナンバー。

これがあることで、シリアスな側面だけでなく、遊び心も彼らの魅力であることが伝わるかな。

 

全体的に見ると、上モノの使い方が絶妙で、とても良く映えている。

主張しすぎず、効果的に、後味も抜群。

青春の切なさを切り取った作品としてはトップクラスで、時代を作ったのも納得の1枚です。