(…その1からの続き)

ご存じの方も多いと思うが、被災地で大量発生して問題となっているのが通称「メタボバエ」などと呼ばれるハエだ。
冷凍倉庫から流された大量の魚、食品、そして…。
津波の被害を受けた場所にはハエが大量発生する要因がいくつもあるのだ。
どうやらこのハエには何種類かあるようなのだが、僕が発見したのはこいつ。(グロ失礼!)

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見慣れないハエだな。目がオレンジ…。
そのあまりの大量発生ぶりに被災地ではハエ取り紙やハエ叩きが売り切れ続出。ほどなくして地元の人が簡単で効果抜群のハエ取り装置を考え出した。
作り方は色々あるようだが、僕が聞いたのは以下の通り。

*1,5~2リットルのペットボトルの側面上部に2~3センチ程度の穴をいくつかあける。
*中に酢、日本酒、砂糖を混ぜたものを入れる。
*これだけ。

そしてその効果はこの通り。

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黒い部分が全部ハエ。


さて、2本目の会場はお隣の南三陸町にあるニュー泊崎荘。
旅館とホテルの中間、といった感じ。普段は釣りや観光目当ての客相手に営業している宿泊施設だ。
気仙沼からは車で約45分の距離にある。

会場へと向かう道中。避難所を回っていると海岸線を走ることが多い。
このような状況ではあるが、三陸海岸というのは非常に美しい。

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目の覚めるような海の青と新緑の緑。そして徹底的に破壊された建物、船、港湾施設。人間の生活は自然環境の上にちょこんと乗っかっているのだということを見せつけられる。
被災地の方は、今も海を美しいと思うのだろうか。


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会場に着いた。
気仙沼から南三陸(というかニュー泊崎荘)への道中は山道が多く、移動中に携帯電話からブログ、ツイッター、Facebookの同時更新を続けていた僕は、すっかり車に酔ってしまった。気合いで会場へ!

このニュー泊崎荘は「二次避難所」である。
学校の体育館や公共の施設が「一次避難所」、ホテルや旅館などの宿泊施設を自治体が借り上げて用意しているのが二次避難所だ。元々宿泊施設なわけなので、寝具の程度や入浴施設は充実している。さらに宿泊施設はそれで収入を得るわけだから、「被災地にお金を落とす」という意味でも有益なのではないか。

今回、被災地ライブを行うに当たって用意したのは、何曲かのカバー曲だった。
元々ライブでもカバーは歌っていたが、被災地には歌とともに僕なりのメッセージを届けたいと思っていたから自分の曲しか歌ってこなかった。
しかし震災から4ヶ月以上が過ぎて、望まれているものが変わってきていると感じる。
うまく言えないが「癒し、励まし」に加えて「娯楽」が求められている、という感覚。
「きよしのズンドコ節」はどこで歌っても受けたが、これが震災後1ヶ月であれば笑ってもらえたかどうか。それ以前に歌おうとも思わなかったが。

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ということでここでは集まってくれた方の年齢層を見て「赤いスイートピー」を歌ってみた。
みんな口ずさんだりして喜んでくれたように見えたが、この曲にまつわる哀しい話しも聞いた。それについては後ほど述べる。

意外かも知れないが被災地でのライブでは若者よりも年配の方が多く見に来てくれる。その場所で若者がたくさん生活していたとしても、だ。もちろんこれがAKBだのEXILEだのであれば違っているだろうが、僕のように「知ってる人は知っている」程度だと若者は「坂本サトル?知らないから行かない」となる。
しかし年配の方は「何でもいいから歌が聴きたい」と思ってくれているようだ。携帯やら何やらで気を紛らわす方法がいくつかある若者に対して、体感できる娯楽に対する欲求は年配の方の方が強いのかも知れない。
だからこそ、そんな人生の大先輩方が知っている曲を歌うことに意味がある。
被災地に4ヶ月近く通ってようやく気づいたことだ。

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帰り際、「え!ここで!?」と思う場所で営業していたガソリンスタンドを発見!

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コンビニ、スーパー、ホームセンター、そしてガソリンスタンド。
「まさかここで!?」という場所でたくましく営業している店を多く見てきた。「店が開いている」ということが被災地の方の気持ちをどれほど明るくすることか。
「日常が少しずつ戻ってこようとしていること」の象徴なのだ。


南三陸町を後にした。
移動中の車内で同行してくれている女性スタッフが「どうしてさっき『赤いスイートピー』を歌ったんですか?」と聞いてきた。いや、なんとなくお客さんの年齢層見たらウケるかなあと思って。「そうですか…。実は…」と彼女はこんな話しをしてくれた。

昔、付き合っていた男性が亡くなったという知らせが今日の新聞に掲載された。
彼は津波に流され、今だに行方不明状態だったが、家族が遺体捜索をあきらめ死亡届を出したのだ。
その彼が好きだった曲が「赤いスイートピー」だったと。
「そんな日にあの曲を生で聴くなんて」と、彼女は後部座席で静かに言った。


気を取り直したように彼女が車内から次の会場である気仙沼市立病院で待機中のスタッフに電話連絡を入れる。
「15分ぐらい遅れそう。道に迷っちゃって。どれぐらい集まってる?…え?まじで?」と絶句。
どうしたのか?と聞くと「すごく集まってるそうです!」との返事。ヒゲオくんはそら見たことかと「だから言ったでしょう!」と得意げだ。
病院なら、遠慮なくみんなが集まれるはず。
ヒゲオくんと同級生チームの思惑は見事に的中したのであった。

(その3へ続く…)