僕の新潮文庫の10冊(4)『母は枯葉剤を浴びた~ダイオキシンの傷あと~』 | 榊邦彦 OFFICIAL BLOG new

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けれど一方で、言葉や愛がまったく立ち向かうことのできない不安や困難も、
また、存在しないのではないか……僕は、今そう思っている。
『100万分の1の恋人』榊邦彦(新潮社)

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『100万分の1の恋人』新潮文庫化記念】

三冊目の『夏の闇』からの、ヴェトナム戦争つながりという訳ではないのですが、

四冊目はこちら。
 


『母は枯葉剤を浴びた~ダイオキシンの傷あと~』中村梧郎(新潮文庫刊 昭和58年)

ベトナム戦争で、アメリカ軍が恐れたのは、ベトナムの森林です。
森林に潜む敵からの予測できないゲリラ攻撃は、近代銃器をもってしても、アメリカ軍を苦しめました。

ということで、考えたのが「枯葉剤=エージェント・オレンジ」です。密林にゲリラが潜んでいるなら、空から枯葉剤を撒いて、密林を枯らしてしまえという発想。

「エージェント・オレンジ」とは、その作戦に使われた「枯葉剤」の缶が、オレンジ色だったことから、「枯葉剤」につけられた別名です。ベトナム戦争の間、およそ10年にわたり、「エージェント・オレンジ」は南ベトナムに散布され続けました。

エージェント・オレンジには、ダイオキシンが含まれており、その後遺症で、ベトナムでは、皮膚炎,ガン,出産異常等が頻発することになります。
出産異常の中でも有名なのは、日本で分離手術が行われた「ベトちゃん・ドクちゃん」ですが、この本のなかで紹介されている、数々の症例は、目をそむけたくなるものばかりです。
この後遺症は、ベトナムの地のみならず、「エージェント・オレンジ作戦」に関わったアメリカ・韓国の帰還兵や、その二世にも生じます。

ホルマリン漬けになった奇形嬰児の写真や、障害を抱えた幼児のあどけない微笑みが、胸を刺し続ける本です。

なんて人間って愚かなんだろうと、思い知らされる一冊。

(現在では、岩波現代文庫で「新版」が購入できます。)